WSF−UK製作、WSF−USA配布
(1999年3月)
レイディー・シンシア・クーパー
娘が生まれた時、乳児高カルシウム血症でした。今はウィリアムズ症候群と呼ばれて
います。8ヶ月のときに診断を受けました。15才になるまで同じ病気を持った人に会っ
たことがありませんでしたので探し始めました。
ウィリアムズ症候群は珍しい病気です。25000回の出産に1回の割合で発生しま
す。最近になってやっと病気の詳細が明らかになりました。ウィリアムズ症候群を「いわ
ゆる障害」として扱うことは、多くの可能性を持った人々の可能性を奪うことになりかね
ません。
以下の症状が一つでもあったら、ウィリアムズ症候群を疑いましょう。
診断:
摂食障害:成長しない赤ちゃん
食べない:成長が遅い
赤ちゃんの口に哺乳ビンをくわえさせようとしますが、赤ん坊は避けてしまいます。
お腹がすいたままなのに、と母親が言いました。
年齢と体重を示すグラフ
ウィリアムズ症候群の子どもは成長が遅い。3パーセンタイル線のすぐ上に位置しま
すが、ここは最下限の位置です。3パーセンタイル線以下になるようであれば、高カルシウム
血症の疑いがあります。
子どもは食べようとしません。(父親が言うには、男の子はWheatbox(シリアル)だ
けで育ちました)。食事を変えることで状態は大きく変わります。
高カルシウム血症のために、子供達は便通の問題や便秘があります。ある母親は、食
物繊維を与えるために、食事に野菜ピューレを作り、便秘にはならなかったといいます。
子どもに落ち着いて接すること、成長過程や食事量に関して理解することが必要です。
ウィリアムズ症候群の子供達は、
容貌:
ダウン症候群と同じように、ウィリアムズ症候群も特徴的な顔をしています。言葉で表す
ことは簡単ではありませんが、外見で認識することは簡単で、診断の手助けになります。
特徴:
SVAS=SupraValvular Aortic Stenosis:大動脈弁上狭窄
心雑音があることで見つけられる。母親は、子どもの心雑音は微かなものだったので、
診断が遅れた可能性があると言っている。
ウィリアムズ症候群の診断が下されたら、医師はSVASを調べなければいけません。
SVASの診断が下されたら、ウィリアムズ症候群ではないか検討する必要があります。
SVASは大動脈が狭くなっているために、心臓に負担をかけます。子どもの成長ととも
に悪化する可能性がありますが、幼児期や子どもの時に軽度であれば、後に問題にあるこ
とは少ないようです。他の血管も影響を受けている可能性がある。
高血圧−ウィリアムズ症候群の人は一生を通じて定期的に血圧を調べる必要がありま
す。高血圧の程度が高ければ治療の必要があります。
ウィリアムズ症候群の子供達は心臓スキャン、特に超音波心描図(echocardiogram)
を受ける必要があると、医師は考えています。(男の子が自分の心臓をモニターで見たよ
と話している)
遺伝:
ウィリアムズ症候群は遺伝ではありませんが、遺伝子に起因します。遺伝子に起因す
るというのは、遺伝子や染色体に原因があるということです。遺伝というのは両親から子
どもに受け継がれるという意味です。
最近の研究の結果、SVASと7番染色体のごく小さな遺伝情報の欠失の間の関連性
が示されました。欠落した染色体の一部分にはエラスチンという蛋白質の遺伝子が含まれ
ています。エラスチンは血管壁を含む組織に弾性を与えます。これがウィリアムズ症候群
の血管の狭窄の原因です。染色体の欠失領域の大きさは人によって違っています。エラス
チン以外にも役割がわかっていない遺伝子が欠失領域には複数存在し、これらがウィリア
ムズ症候群のいろいろな症状の原因になっている可能性があります。両親は欠失のある染
色体を持っていませんが、卵子や精子が作られる際に7番染色体のごく一部が失われてし
まったのです。
この欠失は健康なカップルに突然発生するために、予測することはできません。2人
めにウィリアムズ症候群の子どもを持つ可能性は小さなものです。しかし、ウィリアムズ
症候群の人が持つこの欠失(先に述べた)は、彼らの身体すべての細胞に存在し、もとに
戻すことはできません。つまり、その遺伝子は子どもに受け継がれます。つまり、ウィリ
アムズ症候群の人がウィリアムズ症候群の子どもを持つ危険性は高いのです。
この遺伝子を理解することは、ウィリアムズ症候群のごく一部の治療に役立つかもし
れませんが、普通の人が使う意味でこの病気を「治す」ことは難しでしょう。FISHテ
ストは7番染色体の欠失を調べます。蛍光プローブが染色体の端部とエラスチン遺伝子を
光らせます。ウィリアムズ症候群を持たない人は両方の染色体のエラスチン遺伝子に相当
する部分が光ります。ウィリアムズ症候群の人の場合は、片方の染色体が光るだけです。
FISHテストの結果、自分の子どものウィリアムズ症候群が判明したと父親が言います。
聴覚過敏症:
音に対する過度な感受性を聴覚過敏症と言います。役に立つ検査方法はありません。
ウィリアムズ症候群の場合は、耳で音を聞くプロセスの問題ではなく、脳が耳からの情報
を処理する過程に問題があって聴覚過敏が起こります。特定の音だけに不快感があり、あ
る人にとっては、ほんのいくつかの音がわずらわしく感じます。時には音のある側面だけ
が悩みの種になります。音への嫌悪感は時に不安感と交じり合います。一般的には、ウィ
リアムズ症候群の人は大きくなるにつれて、音をうまく処理できるようになり快方に向か
います。しかし誰でもそうですが、気分が優れない時には状態は悪くなります。両親は子
供達が聴覚過敏症とうまく付き合う方法を見つけてあげることが必要です。少しずつ音に
慣れさせることはとても効果的です。出来る限り子供達に音を聞かせましょう。
運動:
ウィリアムズ症候群の人々は運動協調(粗大運動と微細運動)に問題があります。時
には平衡感覚にも問題があります。ウィリアムズ症候群の小さな子供達は多くの問題を抱
えていますが、大きくなると不安感が加わって問題を複雑にします。階段を怖がる人もい
ます。個人個人で違いがあります。練習をすることで能力を向上させることが出来ます。
自信をつけさせましょう。作業療法をすることによって不可能だと思われていたことが出
来るようになります。
行動:
ウィリアムズ症候群の青年は内気ではありません。たくさん友達がいます。子供達は
愛敬があり、愛すべきユーモアのセンスを持ち、社交性がありますが、行動は問題を生み
出すことがあります。
注意:ウィリアムズ症候群の人は見知らぬ人に馴れ馴れしすぎます。
子どもの時期:たいへん活発で、多動傾向ですらあります。
ウィリアムズの人は大きくなるにつれて静かになる傾向があります。ウィリアムズの
人は不安な性格で、心配症です。自信家で明晰なウィリアムズの人の裏にある不安感は他
人から理解されないことがよくあります。不安感はいろいろな分野でウィリアムズの人た
ちの能力を制限してしまいます。
あるウィリアムズの女の子は、自分ができないことがあるという事実を受け入れるこ
とが難しいと言います。
気分の変化;フラストレーションを感じる;うまく処理できない等いろいろな話題や
物へのこだわりや没頭は共通して見られます。対象は、人・おもちゃ・物体などです。
ウィリアムズの人は「人が好きな人」です。彼らはとても敏感で感情が細やかです。
病気や肉親の死など問題を抱えた人たちに共感を抱きます。
小さい頃から、ウィリアムズの人たちは自分よりかなり年上や年下の人たちと仲間に
なることを好みます。自分と同じ年齢の人たちとグループを作ることは得意ではありませ
ん。彼等には、どうやって遊べばいいか指示をしてくれるリーダが必要です。ウィリアム
ズの人たちが他人とうまくやっていくために準備してあげられる大切なことは、グループ
に入るときにウィリアムズの人の兄弟姉妹達も参加し、適切なアドバイスをしながら経験
を積ませていくことです。
ウィリアムズの人たちは音楽好きな面があります。即興曲を作ることも好きです。
精神的特徴と教育:
ウィリアムズの人々は軽度から重度の学習障害があります。特徴のある優れた面と弱
い面両方が子供に散在しています。ウィリアムズの幼児は顔や声に多くの注意を払います。
成長するに連れて、言語や顔の認識が比較的優れていることが明らかになってきます。典
型的なウィリアムズの子供は3才になるまではしゃべり始めません(正常な発達では18
ヶ月でしゃべります)。一旦言葉が出ると、普通の子供と同じように発達します。最初は
単語で次に2語語、そして文章へとつながります。ウィリアムズのひとはとても話好きで
す。さらに、普通は使わないような単語を時々使うことがあります。話し言葉は彼らの認
知能力を誤解させます。実際には、単語を表面的にしか理解していなかったり、外的世界
を言葉から感じられるほどはうまく認識していません。ウィリアムズの人と話す。話して
いることは理解できます。
ウィリアムズの人々は数字が苦手です。数を数えることはできます。数の概念を理解
することは難しいようです。空間:立体的な物体を作り上げることは苦手です。しかし、
2つの物体を認識し空間に適合するように組み合わせることはできます。
計画を立てたり問題を解決することは苦手です。
13才の女の子は中程度の学習障害児向けの学校に通っています。彼女は4〜5才レ
ベルですが、大切な社会性は進歩しています。ウィリアムズの人々が難しい言葉で話すこ
とで誤解しないでください。適切なレベルのコミュニケーションを保って付き合うことが
必要だと認識してください。2〜3種類の違った方法で説明を受けたり、もっと深く話題
について話てみるように励まされたりすることで、ウィリアムズの人々は概念をよりよく
理解できるようになります。
文字を読めないウィリアムズの人もいます。上手に読める人もいます。
数を数える練習は数の概念理解には役にたたないでしょう。数の概念の練習をするほ
うが効果的です。
ウィリアムズの人々にコンピュータを使うように勧めてください。外国語を習うこと
もいいでしょう。すばらしい発音をする人もいます。
ウィリアムズの子供の勉強開始は、可能な限り早く始めましょう。幼児期から始める
といいでしょう。いろいろな活動をさせてください。大きくなった時の発達の参考になる
ことが発見できるでしょう。
ウィリアムズの人々に必要な環境を整えることは教師にとって簡単ではありません。
ウィリアムズ症候群の子供に最適な教育環境に関して、教師はいろいろと注意深く検討す
ることが必要です。
騒音:子供がたくさんいるようなクラスは彼らに適した環境ではありません。
より良い環境:体系化され、注意深く計画されること。気を散らせるものがないこと。
教師はウィリアムズの子供のために次のようなことをする必要があります。
両親は学校が提供してくれる設備や授業を注意深く見守ることが大切です。地域の教
育委員会といっしょになって、自分達の子供の教育計画を出来るだけ早く作ることが両親
の大切な役目です。(教育計画:statement:はイギリスで行われている制度)。教育計画
が完成したら、教育制度が子供の要望を満たしているか法的に評価されます。
将来像:
ウィリアムズの人々は大きくなると家を出ます。自信を持てば持つほど、よりよい人
生になります。もっと外出しましょう。多くのウィリアムズの成人は家族とともに暮らし
ています。滞在型の施設やグループホームに住む人もいます。家族や地域社会の継続的な
援助を受けて一人暮らしをしている人は多くありません。
ウィリアムズの成人が鉄道やタクシーに乗ります。グループホームに住んでいます。
家を出てからの住環境や教育を受けるためのカレッジ等を考えながら社会サービスや学校
の援助を受けるように、両親は積極的に行動することが必要です。
仕事を探す:「世話をする仕事」が向いています。ウィリアムズの人々は注意深く監督と
援助を受ける必要があります。肉体労働よりも「世話をする仕事」が向いているのは、ウ
ィリアムズの人々が言語能力を持ち、それを伸ばすことが可能だからです。
ウィリアムズの男性が空港で働いています。テーブルを掃除しています。母親は、自
分が死んだ時に自分と同じくらい息子を愛してくれる人が欲しいと思っています。あるウ
ィリアムズの成人女性はボーイフレンドがいて、結婚したいと思っています。両親は反対
しています。今だと娘は誰かから助けてもらわないと暮らしていけないと考えているから
です。両親は娘が安全で幸せになって欲しい願っています。それが彼女の未来です。
ウイリアムス症候群財団(The Williams Syndrome Foundation)
両親、医者、教師、その他の専門家のため。
アドバイスを提供
援助を受けられる人
一人ぼっちではないという連帯感
他の人が人生を送っていくのと同じように、現在は社会サービスを受けることが容易にな
ってきた。
「もし障害児を持つことがあなたの運命ならば、ウィリアムズ症候群の子供を持ちなさ
い。」