よくある質問と回答(FAQ)
ウィリアムズ症候群の両親向けに米国のWSAが作成した質問と回答集です。米国向けの内容なので日本にはそのまま当てはまらない部分があります。次に示すホームページに掲載されたいました。
(2003年1月)
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Frequently asked questions
あなたが心配されていることは、これまで多くの先人が経験したきたことです。あなたが聞いてみたいと思う質問とその答えを一覧にしました。
家族に関する一般的な問題
医学に関する問題
教育に関する問題
移行期/成人
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ウィリアムズ症候群の原因は何ですか?
ウィリアムズ症候群は両親が妊娠前後あるいは妊娠中に何かをしたこと、あるいは何かをしなかったことが原因ではありません。ウィリアムズ症候群の患者のほとんどは7番染色体から、エラスチンを作る遺伝子を含む遺伝情報が失われていることがわかっています。タンパク質であるエラスチンは血管壁に強度と弾性を与えています。
エラスチン遺伝子の欠失がウィリアムズ症候群に見られるいろいろな症状を引き起こしているようです。医学的あるいは発達的問題のなかには、7番染色体上のエラスチン遺伝子の近くに存在する別の遺伝情報が欠失したことで引き起こされていると考えられいるものもあります。欠失範囲は個人個人で異なっているようです。
ほとんどの家族で、ウィリアムズ症候群の子どもは血族の範囲をかなり拡大しても一人しかいません。しかし、ウィリアムズ症候群の人の場合はその人の子どもにウィリアムズ症候群を遺伝する確率が50%あります。
ウィリアムズ症候群はどように診断されるのですか?
多くのウィリアムズ症候群の人が診断を受けないままか、比較的年を取ってから診断を受けています。このことは、ウィリアムズ症候群の人が重篤で進行性の医学的問題を抱える原因になっているとして問題視されています。ウィリアムズ症候群の兆候が見られた場合は、詳しい検査を受けるために臨床遺伝医の診察を受けることを薦めます。
臨床的診断結果は血液検査によって確定されます。FISH(fluorescent in situ hybridization)法という検査方法でDNA検査を行うと、ウィリアムズ症候群の患者の98%以上から7番染色体にエラスチン遺伝子の欠失が見つかります。
私の子供はまだ診断を受けていません。どこにいけば検査を受けられるのでしょうか?
近くの遺伝科クリニックでエラスチン欠失を目的としたFISH検査を依頼して下さい。血液を採取して検査に出してくれます。あなたの住んでいる地域に遺伝科クリニックが無ければ、内科医に検査を依頼することも可能で、信頼できる細胞遺伝学研究所に依頼してもらいましょう。主治医には、7番染色体のエラスチン遺伝子の欠失を調べ、ウィリアムズ症候群かどうか確認するためのFISH検査を依頼する適確な指示書を書いてもらうことが必要です。(標準的な染色体検査ではウィリアムズ症候群の欠失は検出できません。)
誰がウィリアムズ症候群の人の世話をすべきでしょうか?
ウィリアムズ症候群の人が持っている多くの問題が引き起こす複雑な状態を考えると、数多くの医療や教育の専門家が関わるべきです。将来発生する可能性がある医学的問題に備えるために定期的な検査を受けることが必要で、その検査はウィリアムズ症候群でよく見られる広範な症状に明るい内科医に依頼しましょう。
ウィリアムズ症候群の青年や成人には知的な面で長所と短所が混在することが多くあります。会話・長期記憶・社交性など能力が比較的高い知的機能がある一方で、微細運動や空間位置把握などかなりの障害を受けている能力分野も存在します。
知的能力に長所短所があるため、発達心理士・言語療法士・理学療法士・作業療法士などの専門家もウィリアムズ症候群をよく理解していることが必要です。住んでいる地域で協力を得られるこれらの分野の専門家から構成される多元的ウィリアムズ症候群教育チームが作れるととても効果的です。ウィリアムズ症候群クリニックが近くにない時は、その地域でこれらの大切なサポートを提供してくれる専門家達を探し出すことが家族の大切な役目になります。
誰が家族の支援をしてくれますか?
ウィリアムズ症候群協会(WSA)はウィリアムズ症候群の人の生活を向上させることに専念しています。同協会はこの症候群の人とその家族を探し出し、医療と教育に関してタイムリーで正確な情報を広める努力をしています。地域毎の年次会合や地域集会、年4回発行されるニュースレターと2年に1度開催される全国大会などを通じてメンバーへのサポートを行っています。ウィリアムズ症候群協会は同症候群に関する教育・行動・社会性・医療面における研究活動を積極的に援助しています。
ウィリアムズ症候群の子供の音楽性について書かれた資料をよく目にします。自分の子供に音楽的才能があるかどうかはどうすればわかります? そしてその音楽性を伸ばすにはどうすればいいのでしょうか?
ウィリアムズ症候群の子どもの多くは明らかに心の中に音楽(やダンス)を抱いて日々を過ごしています。彼らは音楽をよく理解していて、その他のほとんどの分野で問題を抱えているにも関わらず、あらゆるジャンルの音楽を楽しむことができ、音楽的な事柄には素晴らしい集中力を発揮します。
お子さんがかなり小さい時は、子どもを見てくれる近所の音楽療法士を見つたり、幼児音楽教室に通わせたりして、さまざまな音楽の「シャワー」を与えてください。一定時間なら先生の横にじっと座っていられる程度まで成長したら、試しに音楽レッスンを受けさせみて下さい。手始めにはスズキメソードによるピアノレッスンが適していることが多いようです。いろいろな楽器を使って10分から15分程度のミニレッスンを行い、どの楽器がその子に最も適しているかアドバイスをしてくれる音楽学校もあります。
ウィリアムズ症候群には医学的問題がよく起こりますか?
ウィリアムズ症候群はいろいろな臓器に影響がでます。しかし、まったく同じ問題を抱えたウィリアムズ症候群の患者は存在しないことを覚えておいてください。成長するに連れて発生する症状が存在するため、ウィリアムズ症候群の患者は医療検査と診察を定期的に受けることが大切です。医療問題が起こる可能性があるものの、ほとんどのウィリアムズ症候群の子どもや成人は健康で活動的な人生と寿命をまっとうできます。
ウィリアムズ症候群の特徴について書かれた資料をたくさん読みました。私の子供はその全てにあてはまるのでしょうか?
いいえ、まずそのようなことはないでしょう。ここに掲げられている特徴はウィリアムズ症候群に共通的に見られることが知られていますが、すべてを網羅しているわけではありません。またウィリアムズ症候群の人が全ての特徴を備えているということでもありません。例えば、循環器系に異常がないウィリアムズ症候群の人もいます。聴覚過敏ではない人、低身長ではない人もいます。同様にほとんどのウィリアムズ症候群の子どもたちは過度に友好的で話ずきですが、言葉が少なく内気な人もいるのです。
子供がまだ乳児や歩き始める年齢の頃から治療目的の療法を受けるべきですか、それとも学齢期まで待つべきでしょうか?
お子さんには可能な限り速い時期から治療目的の療法を受けさせてください。どのような療法が適しているかを調べるためには発達検査を受けるとよいでしょう。多くのウィリアムズ症候群の幼い子どもたが、作業療法・理学療法・言語療法を受けています。
次の子供の妊娠は気をつけるべきですか? 次の子供もウィリアムズ症候群になる確率はどの程度ですか?
ウィリアムズ症候群は特発的に発生します。両親のどちらかから遺伝したものではありません。研究者達はウィリアムズ症候群の子どもが生まれる確率は20000人に1人程度で、次の妊娠の場合もその確率は変らないと考えています。つまり、2人目の子どももウィリアムズ症候群になることはほとんど起こらないと考えてよいでしょう。
小学校に行く年齢の子どもに最も適した教育プログラムを教えてください?
ウィリアムズ症候群の子どもは一人一人の認知機能のばらつきがとても大きく、すべての子どもに適するプログラムは存在しません。お子さんのためのよい教育プログラムを作りあげる鍵は両親と専門家が協同作業を行うことにあります。お子さんをサポートする「チーム」を作り、親であるあなたがそのチームの重要な一員になり、お子さんの長所や能力を伸ばすプログラムを作り上げることが重要です。チームメンバーであるウィリアムズ症候群の専門家やWSAの助言に加えて、お子さんについてあなた自身が知っている個人的で重要な知識を提供することで、お子さんのめに最適な選択を行うことができます。
いろいろな学校やカリキュラムの中からウィリアムズ症候群の生徒に最も効果的なものを探し出すために、WSAは非公式な調査を行いました。150件を超える回答と「典型的」な認知プロファイルを元にして、専門的な視点からクラスセッティング・検査や評価方針について書かれたパンフレットが本部オフィスで手に入ります。
子供は10代です。卒業後の移行計画は今すぐ考えるべきでしょうか、それとも卒業できる段階まで待つべきでしょうか?
移行計画はできるだけ早く(13〜14歳)作り始めることが大切です。あなたやお子さん自身が卒業後教育プログラム(a post secondary education program)に参加したいと考えている場合、選択肢について資料を集め、特定のプログラムへの適切な準備を開始する時期として適しています。「カレッジ」という名前で高校と同じ内容の教育を示していることもあれば、別のカリキュラムである「就職準備」のほうが名前として適切であることもあります。一人暮しに必要な技能を身につけることに主眼を置いた活動を探したいかもしれません。どちらも学校が提供するプログラム、あるいは若い障害者を支援する組織が提供するプログラムで実現できます。
全国の地方自治体の公共機関が就職準備プログラムや職業訓練や就職斡旋を行っています。あなたの地域の学校郡や、ARCやLD協会など障害者をサポートする団体の地域支部が提供するサービスも検討してください。あなたの住んでいる州の障害者発達協議会(Developmental Disabilities Council)も、お子さんが社会人になるための援助に関する情報源の一つです。
子供の将来には大学や就職という可能性はありますか? 一人暮しはできるのでしょうか?
先ほどウィリアムズ症候群の人の能力は非常に幅広と書きました。カレッジの授業が向いていない人もいますが、それが有意義な人もいます。カレッジが援助するプログラムに参加するウィリアムズ症候群の若者の数がどんどん増えています。最初は地域のコミュニティカレッジでしたが、全国的に大きな大学が学習障害を抱えた生徒向けに提供しているプログラムへの参加者も増えています。学生が受けられる援助のレベルはほとんど無いに等しいレベル(特別な受験方法や勉強量に関する便宜などがあるだけ)から始って様々です。卒業後プログラムの数も増えています。それらは一人暮しの技能獲得が主目的で、実学(小切手口座とお金の管理など)・社会性の発達・就業準備などが含まれます。WSAは皆さんがこれらのプログラムを探し出すお手伝いをしています。
ウィリアムズ症候群の成人は、レストラン従業員・事務所の事務員・デイケアセンターの補助員・大手チェーンストアの挨拶係など賃金を貰うさまざまな仕事についています。それ以外に、老人ホーム・病院・デイケアセンターやそれに似た職場で無料奉仕をしている人もいます。”Heart to Heart”は職業訓練など就職に関して援助を受けられる公共機関の紹介記事を定期的に掲載しています。
職業に関して色々なタイプがあるように、ウィリアムズ症候群の成人に適した住環境も様々です。ルームメイトの存在にかかわらず、完全に一人で生活できるウィリアムズ症候群の成人がいます。半分だけ自立した生活(通常はルームメイトと供に)をする人もいます。その場合、管理者がいる集合アパートに住み、最低限から適度な範囲までのサポートを受けています。いろいろなタイプの障害者と一緒にグループホームで暮す成人もいるし、両親と自宅に住むことを選択した人もいます。住環境の選択は、利用できる公共交通機関と職場への近さに大きく影響されます。ARCやLDA、州の障害者発達協議会やその他の障害者関連団体が、あなたの娘や息子が一人暮しの準備を行い、最適な住環境を整える援助を行う地域の公共機関を探し出すための情報を提供しています。
我が家の子供は高校を卒業しました。旅行や社会活動を供に行うような関係を持ちつづける青年のグループを見つけたいと願っています。手助けしていただけますか。
はい、できます。いろいろな地域で親のボランティアグループが社会人グループをスタートさせ運営のサポートをしています。各グループは月に一度程度非公式に集まり一緒の時間を過ごします。
WSAは付き添い人が同行する若者向けの旅行グループや、旅行したい若者につきそうボランティアに関する情報提供をしています。
社会活動への参加も、地域のARCや地域社会のリクリエーションプログラムを通じて可能です。
ウィリアムズ症候群の成人はどのような感じになりますか?
ほとんどのウィリアムズ症候群の成人は自分の身の回りの世話ができ、学校や職業訓練校を卒業できます。いろいろな職場環境(監督者がいるケースから完全に自立したケースまで)で働いています。ウィリアムズ症候群の成人の多くは両親と一緒に住んでいますが、管理者つきのアパートに住む人や完全に一人暮しをする人もいます。
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