ウィリアムズ症候群:珍しい病気を持つ人の家族がピクニックに集まった



この新聞記事はWSF(ウィリアムズ症候群財団)が運営する ホームページに掲載されて いました。

(2000年8月)

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Thursday, June 29, 2000
Williams syndrome: Families of those with rare disorder come together for picnic

By Cheryl Allen
STAFF WRITER
callen@greenvillenews.com

エイミー・ラスクレイン(Amy Lascurain)はテディベアの形のパウンドケーキを焼き、 粉糖でよだれ掛けを書きました。彼女はきれいな色の包装紙でプレゼントを丁寧に包むと、 にこにこしている家族と一緒にテーブルについて、息子のために「ハッピー・バースデイ」 を歌いました。

彼女の期待も含めて全ての準備ができていました。

しかし、どんなになだめすかしても、きれいに包まれたプレゼントを見せても、この 日曜日に1才の誕生日を迎えたアンドリュー(Andrew)は反応しません。彼の母親は、彼が 口の回りをケーキだらけにしたり、包装紙を引っ張る光景を見たいと思っています。にた にた笑うだけでもいいのです。どれでもかまいませんでした。

しかし、この金髪の幼児はオーシャンブルーの目をうつろに見開いて自分のイスに静 かに座っているだけでした。

「彼はしゃべれませんでした。彼は反応がほとんどありませんでした」と、ラスクレ インは回想します。

子どもたちが昼寝をしたその日の午後遅く、ラスクレインは落胆して自分のベッドに もどって泣きました。泣きながらすでに知っている事実を噛みしめていました。テーラーズ (Taylors)に住んでいる3人の子どもの母は、数日前に医者の診断を聞きましたが、このパ ーティの日まで実感がわきませんでした。

アンドリューはウィリアムズ症候群という発生頻度がとても少ない不治の遺伝子病で、 この症候群は発達遅延や学習障害あるいはさまざまな合併症を引き起こします。この病気の 子どもは、歩く・しゃべる・トイレに行くなどの発達のめやすが普通の子どもより遅れる 傾向にあります。

この病気は1960年代初頭には知られていましたが、ここ10年の間に開発された遺伝 子検査が正確な診断を可能にしました。ウィリアムズ症候群協会(WSA)という全米サポー トグループが、この特殊な病気の子どもの世話をする親たちに、精神面のサポートや研究 情報や希望を与えています。つい最近、サウス・カロライナ州に住むこのグループのメン バーがグリーンビル(Greenville)で会合を開きました。WSAの南東地域の責任者で、ラド ソン(Ladson)に住むキャサリン・ミンデル(Cathyrn Mindel)によれば、この病気は全国的 に見て2万人に1人の割合で発生し、サウス・カロライナには40家族あまりが住んでいる と考えられています。

アンドリューのようなケースでは早い時期に徴候が出ます。アンドリューが2ヶ月の 時、医師が心雑音を発見しました。6ヶ月の時にはウィリアムズ症候群に共通的に見られる 症状である大動脈弁上狭窄(大動脈が狭くなる)だと診断されました。

「ウィリアムズ症候群の原因は7番染色体から一部が欠失していることです」と、グ リーンウッド遺伝センター(Greenwood Genetic Center)の遺伝コンサルタントであるゲイ ル・スタップルトン(Gail Stapleton)は述べました。徴候を示す子どもたちは臨床遺伝科医 の診察を受け、血液検査で確定医診断が行われます。FISHと呼ばれるこの検査方法は遺伝 家系の研究者によって開発されました。

1961年にこの症候群が認識されて以来、治療に関する継続的な研究が成果を出してい ます。7月中旬にミシガン州で開催が予定されている第9回WSA集会には世界中から研究 者が集まり17件の臨床研究が発表されると、ミシガンに本拠地を置くWSAの事務局長の テリ―・モンケイバは語ります。

「まだまだ多くの発見があり、以前にもまして関心を集めています。今回はこれまで で最も国際的な会議です。」と、彼女は語ります。

「この症候群は遺伝子が原因ですが、遺伝ではありません」と、彼女は指摘します。「自 分自身を責めている両親をたくさん見てきました」と、モンケイバは語ります。しかし、 人種や性別に関わらず誰にでも発生する可能性があることからも、自分を責める必要はあ りません。

ウィリアムズ症候群の人の知能指数にはかなりばらつきがあります。

「この人たちは経度から重度の学習障害があり平均的な知能領域に含まれます」と、 モンケイバは言います。「精神遅滞ではありませんが、そう思われていた時期もありまし た。」

この症候群に併発する医学的問題には、固い関節・極度の刺激過敏性をもたらす血中 カルシウム濃度の上昇・形状や生え方が異常な歯・体重増加不全などが含まれます。加齢 と共に顕著になる顔貌の特徴には、はれぼったい目の周囲・幅広の口と厚い唇が含まれま す。

ラスクレインは、アンドリューが診断を受けたことは安堵につながったと言います。 「何かしら悪いところがあることがわかったからです。」

おすわりができたのは9ヶ月の頃でした。1才半になるまで歩きませんでした。しゃべ れるようになったのは3才でした。

しかし、当初彼らが持っていた知識は心の支えにはなりませんでした。 「私たちには未知の領域でした」と彼女は言います。「だからとても怖かったのです。 うまく切りぬけられたらどんなに良いだろうと何度も思いました。」と語ります。「挫折感 を感じました。将来の希望を変える必要がありました」

アンドリューは10才になり、大幅に進歩を示しています。読む力は2年生レベルで語 彙は増え続けています。彼の性格には暗いところはまったくありません。彼は話好きで、恐 竜とコンピュータゲームが好きで、患者の取扱いがうまい医者になりたいと思っています。 「ぼくはすばらしい医者になりたいんだ」と、彼は言いました。

アンドリューはユーモアの精神と勉強したいという強い意思を持っていると、ジョ ン・マコーミック(John McCormick)は言います。彼はアンドリューが参加しているグリー ンビル特殊教育学校の「隠れた宝もの(Hidden Treasures)」プロジェクトの管理者です。

「彼は確実に進歩し、こつこつと努力し、決してくじけたりしません」と、マコーミ ックは言います。

ラスクレインが長年抱えていた心配事のいくつかは、ウィリアムズ症候群と戦ってい る人たちと会うことで解消しました。ラスクレイン家の人たちはグリーンビルで最近開催 されたこの病気の人の家族が集まるピクニックに参加しました。

よく晴れた午後、マクファーソン公園(McPherson Park)でホットドッグやチーズバー ガーやソーダを食べながら体験談を話し合いました。

「きのおけない集まりでした。とても役に立ちました。」と彼は言いました。

ローレンスから来たサラとハワードのバーグレス夫妻(Sara and Howard Burgess of Laurens)はピクニック場の東屋の日陰にあるベンチでくつろいでいました。この夫婦はウ ィリアムズ症候群で28才になる娘シェリー(Sherry)を連れてきていました。バーグレスの 奥さんはローレンス中学校の食堂のマネージャーとして働いていて、過去フロリダ州やジ ョージア州やコロンビア州で同じようなピクニックや会合に参加してきました。

「いつも何か新しいことを勉強できますよ。」と彼女は言います。

グリーンビルでのピクニックはウィリアムズ症候群協会の南東地域支部から資金援助 を受けています。全米組織は1982年にサンディエゴに住む数家族によって設立されました。 会員名簿には4000家族あまりが登録されています。

この非営利団体が目指す目標は医学関係者などの専門家たちに情報を届けることで世 間のウィリアムズ症候群に対する知名度を高めることです。同協会は全米をカバーするニ ュースレターを発行し、家族のために精神的な援助と研究資料を提供し、音楽キャンプや 勉強会や会合を開催します。

医学面や発達面に障害があるにもかかわらず、多くのウィリアムズ症候群の人たちは 長生きをし、活動的な人生を送っています。彼らはほとんどの場合社交的であり楽観的な 性格です。多くの人に優れた才能や能力があります。

シェリーは成人の障害者を対象とした訓練センターで働いており、茶褐色のやさしい 目とあたたかな笑顔で人々を迎えています。彼女は優れた耳も持っていて、例えば遠くの サイレンを聞きつけて普通の人より早く行動することができると母親は言います。

ウィリアムズ症候群の人たちの多くは音楽に対する情熱を持っているように見えます。 例えば、モンケイバによれば14才の息子で赤毛と青い目のベン(Ben)は驚くほど上手にド ラムを演奏できるそうです。彼は地域の慈善活動でプロのバンドといっしょに演奏したこと さえあります。

「でも、彼は靴の紐を結んだりボタンをはめることはできません」と彼女は言います。 ベンが音楽を続けようが別の職業に就こうが、彼は社会で居場所を見つけられるだろ う、と彼女は続けます。

「彼はこのすばらしい魂を受取りました」と、モンケイバは言います。

他の障害者と同じように、彼は他者に与えられるものをたくさん持っています。「彼ら は特別であり、すばらしい人生を歩んでいます」



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