ポーラ・ジェーン・マクレランのメールより



ウイリアムス症候群である子供の兄弟が、最近「どもる」ようになったことを心配して、「ウ イリアムス症候群の子供の兄弟姉妹に、どのように対応したら良いか、またその兄弟姉妹がど のように思っているのか知りたい。」という、ある母親のメールに対して、下記のような応答 がありました。我々にも、非常に有意義な情報です。御本人の承諾を得て訳しました。

(1997年2月)


ポーラ・ジェーン・マクレランのメールより

最近、ウイリアムス症候群を持つ子供の兄弟姉妹に関するメールを読みました。私にも、ウイ リアムス症候群の兄がいるので、そこで述べられていることはよく解りました。

今、私は20才で、兄は22才です。私が小さかった頃、兄と私は、格好の遊び仲間でし た。何をするときでもいっしょでした。私は、まだ幼かったときでさえ、兄が普通とは違って いることに気がついていましたが、兄といっしょにいることがとても楽しかったので、その違 いはたいした問題ではありませんでした。兄は、私とブランコにのったり、自転車をこいだり、 ままごと遊びをしたり、マンガを見たり、歌を歌ったりするのが好きでした。とにかく、する ことなすこと常にいっしょでした。私が中学生になったときに、兄との関係が変わりました。 私は成長しましたが、兄は違いました。私は、今だに兄が子供の頃と同じゲームで遊んでいる 事に気がつきました。私達は、それ以降いっしょに成長していく事ができませんでした。現実 に兄の限界が示されたのです。

みんな兄が好きでしたが、私と同じ年頃の子供達には、年上の兄がなぜ小さな子供と同 じ様に振る舞うのか理解できませんでした。気にしている友達には説明をしましたが、そうで ない人たちには何も言いませんでした。兄が心臓の外科手術を行なったのは13才の時でした。 私は11才でしたが、手術を受けようとしているこの人が、兄というだけではなく、「過去に 置いてきてしまった」親友であり、最も仲良しの遊び友達だったことに気がつきました。兄の 病気に関してきちんと説明してくれるように両親に頼みました。両親は出来る限りの説明をし てくれました。そのおかげで、よく理解できるようになりました。

中学や高校にいっている間にも、兄の限界に関していろいろ衝撃を感じました。兄の極 端ななれなれしさは、時として、私の友達の神経をいらだたせたり、恐がらせたりしました。 私は、多くの10代の若者と同じ様に、友達と兄を合わせる事を避けるようになりました。母 は、私が兄を商店街に連れて行こうとしない事に困惑していました。しかし、私は、兄が見知 らぬ人に話し掛けているのを見ると、友達と楽しい時間を過ごすことが出来ないと思っていま した。

兄は18才の時、大人になって食事がうまくできるようにするために顔の手術を受けま した。このとき、私は16才でしたが、兄がウイリアムス症候群であることを知りました。兄 のかかり付けの心臓専門医のカルテを読みました。兄が14才の時に、何になりたいかと聞か れて、「妹のようにかしこくなりたい」と言ったことを知りました。それを見て涙が出ました。 兄が長い間どれほど辛い思いをしていたか、兄を遠ざけようとしていた私を彼がどれほど必要 としていたかを痛感しました。

それからいくつか年を取って、今は兄との関係は大変うまくいっています。しかし、我々 とは違ったものと、自身に限界を持っている兄を持つことの難しさに気が付くまでには、ふた りが年を取り、大人になることが必要でもありました。このところの最も重大な問題は、兄は 望む事を全てはできないため、私にその分を要求してくることが、私のフラストレーションに なっていることです。私が経験したこと、あるいはこれから経験する多くのことを、兄は知る 事が出来ないであろうということに気がついています。だからこそ、兄の持っている才能を発 揮できるようにし、それが認められるようにしてあげることが、私の責任だと思っています。 兄は私に多くのものを与えてくれました。

私は今、大学でウイリアムス症候群に関する大規模な調査報告書をまとめています。ま た、兄や私や両親の手助けになるような、ウイリアムス症候群とうまく付き合っていくための 研究成果や情報を手に入れました。

いっしょに大きくなってきたのに、ふと気がつくと、横にいるのは以前と違ってしまっ た兄弟姉妹だということに気がつくのは辛いものです。しかし、ウイリアムス症候群の人々は、 私の知っている誰からも愛され、受け入れられているということは、大事なことです。ウイリ アムス症候群の子供の兄弟姉妹達も、彼らのウイリアムスの兄弟姉妹がいかに特別で素晴らし い存在であるかということに、いずれ気がつくでしょう。御両親は希望を捨てないで下さい。 ウイリアムス症候群の子供が、彼らの兄弟姉妹に与えている愛と成長と特別の才能は、ウイリ アムス症候群の子供がいない兄弟姉妹に関して私が聞いた、どの話とも比較できないものです。 彼らは無条件の愛情を与えてくれます。それは、遊び友達やボーイフレンド・ガールフレンド からは決して得る事はできません。私の兄は、私の人生に思いもしなかった大きな影響を与え てくれました。でも、兄が教えてくれた最も重要なことは、「何事も努力すれば、世の中には 克服できないことなど無く、あなたの前に障壁が立ち塞がることはないだろう」ということで す。兄を見るたびに好きになります。それ以上にすばらしいことなんてあるでしょうか?

Paula Jeanne Mac Lellan


私達の場合は、ウイリアムス症候群を持った紘輔(7才)に兄(10才)がいます。これまで 兄には、紘輔は心臓の病気だとしか説明してきませんでしたが、最近「ウイリアムス症候群の 会」で出していただいた、「親のためのガイドライン」を読ませました。かんしゃくを起こし やすいところなど、紘輔にそっくりだと言っていました。その後、兄が特に変わったわけでは ありませんが、紘輔も含めた家族みんなで、「ウイリアムス症候群」ということについて話せ るということだけでも、読ませて良かったと思っています。どうしても紘輔の方へ手をかける 時間が多くなる事を解ってもらえたのではないか、と思っています。

一方、紘輔本人はウイリアムス症候群という言葉を知っているだけです。最近はやってい るインフルエンザと混同して、「友達がウイリアムス症候群にかかったので遊べない!」なん て言っています。そのうちに、ウイリアムス症候群について、もう少し詳しく教えていこうと 思っています。

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