By Kathryn Kerpestein
"Heart to Heart" Volume 15 Number 3, December 1998 Page 9-10
以前勤めていた学校で使用していた一冊の本を紹介したいと思います。「社会性」を理
解し、それを発達させるカリキュラムを作成するためにとても役に立つ貴重な本でした。
その本は「Helping the Child Who Does Not Fit In」(その場に溶け込めない子どもを助
ける)で、Stephen Nowicki博士とMarshall P. Duke博士によって書かれました。これまで
非言語的学習障害(ウィリアムズ症候群の子どもと認知的には良く似ています)の子ども達
を教え、非言語的コミュニケーションについて彼らと勉強してきたにもかかわらず、自分
がウィリアムズ症候群の子どもを持ち、その複雑さを目の当たりにするまではまだまだ初
心者でした。この記事を書いた目的は、親と教師の両面から、みなさんのお子さんに最も
重要と思われるコミュニケーションについての手助けをしてくれると思われるすばらしい
本を紹介する事です。
ウィリアムズ症候群の人を知り、一緒に暮らし、愛し、一緒に働いたことのある我々
は、特別な彼らが持っている事が多い典型的な言語的コミュニケーション能力についてよ
く知っています。しかし、彼らの成長をそばで見守っている我々には、個人的人間関係を
築き維持していけないというウィリアムズ症候群に人々に付きまとう悲しい事実にも気付
きます。非言語的コミュニケーションは教える事が可能で、早く始めれば始めるほど成功
する可能性は高くなります。
「その場に溶け込めない子ども」の多くは、非言語的コミュニケーションの表現や理
解に困難があります。Nowicki博士とDuke博士(以後著者ら)は非言語的コミュニケーシ
ョンを「表情・態度・身振り・対人距離・抑揚・衣服など」に分類しています。これらの
うちのどれか一つ、あるいはすべてに問題があると、社会的な排除を受けます。その時の
ほとんどの場合、子ども達自身にはなぜ自分が拒絶されたのかその理由がわかりません。
「非言語的コミュニケーションは音声言語とともに機能する高度に発達した言語です。
最初は両親や家族から(無意識に)教えられ、普通は観察を通じて身につきます」。 子ども
がひとつでも社会性で問題を抱えていれば、その子は「非言語的コミュニケーション障害」
を持っていると考えられます。
言葉と、非言語的行動やコミュニケーションが食い違っている場合、他人は非言語的
メッセージの方を信じることがほとんどです。例えば、裏庭で仕事をしている隣人を見か
けて近づいて行って、背を丸め笑顔もなしにのろのろと仕事をしていることに気付けば、
その人がたとえ口で「元気だよ」と言ったとしても、疲れているか動転していると思うで
しょう。彼らの非言語的コミュニケーションの方を信じるべきです。店の店員を想像して
見てください。まっすぐに立ってにこにこしている人と、背を丸めてしかめっ面をしてい
人のどちらに近づいて行きますか? どちらの人と買い物の話しをしたいですか? 大抵の
場合、「正しくない」メッセージを発している人は、その事に気が付いていません。以前い
っしょに表情の勉強をしていたある生徒がいました。ある日その女の子に笑顔を向けて、
私の笑顔の意味は何かわかりますかと訊ねました。彼女は、前にも見たことはあるけれど
もその意味はよくわからないと答えました。笑顔は友情と受容を示しているのよと教えて
あげると、たいへん喜びました。彼女はどう対応していいのか知らなかったのです。驚き
です。
その本は次に掲げる6つの異なる分野の非言語的コミュニケーションについて書かれ ています。
著者らは非言語的コミュニケーション障害を表すのに、dyssemiaという単語を使うよ
うに提案しています。この単語はギリシャ語のdys(困難)とsemes(サインや信号)に起源を
持っています。つまり、あなたのお子さんが非言語的コミュニケーション障害を持ってい
ればdyssemiaなのです。これは対面通行の道だということを記憶しておいてください。非
言語的コミュニケーションを上手に表現できる子どもが、他人の非言語的コミュニケーシ
ョンを理解できない事も、その逆もあり得ます。時には、非言語的メッセージを表現する
事も理解する事も両方出来ない子どももいます。
私には非言語的コミュニケーションが要素の一つとしてどれほど大切かをうまく表現
できません。「そうね、心配しなきゃいけないことがまた一つ増えたわね」と、みなさんが
考えられるだろうと想像できます。しかし、この本は親に向けて、親のために書かれてい
ます。読み易く理解し易いだけでなく、治療につながる練習課題も提供してくれます。自
分の子どもの状況に気が付くだけでも、十分ものごとを前に進められることもあります。
この記事が、すばらしくて役に立つマニュアルだと私が考えるこ本をみなさんがお読みに
なるきっかけとなることを期待しています。この本のタイトルは「Helping the Child Who
Does Not Fit In」 Stephen Nowicki Jr., Ph.D. and Marshall P. Duke Ph.D. Peachtree
Publishers, Ltd. 1992 です。
(1999年10月)