ウィリアムズ症候群と幸福感



Williams syndrome and happiness.

Levine K, Wharton R
Building Blocks, Peabody, Massachusetts 01960, USA.
Am J Ment Retard 2000 Sep;105(5):363-71

ウィリアムズ症候群は遺伝子疾患であり、医療面や発達面で様々な症状を呈するが、 その中に実質的な幸福感をたびたび表現することが含まれる。本論分では、ウィリアムズ 症候群の人々が発揮する独特な幸福感の表現方法に関して、逸話的記録とひとこまひとこ ま分析した会話を記録している。次に、ウィリアムズ症候群が及ぼす別の影響、特に不安 感がある状況下における幸福感について議論を行った。議論の最後に、感情における遺伝 子の役割を議論した。

(2000年10月)

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以下は上記論文の解説記事で、アメリカのウィリアムズ症候群協会の会報に掲載されてい ました。
(2001年8月)
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"Heart to Heart" Volume 18 Number 2, June 2001, Page 26

著者であるリバインとワートンはウィリアムズ症候群の興味深くかつ肯定的な特徴で ある「幸福感」について述べています。彼らによれば、エスキモーが雪に関する言葉を23 種類も持っているのと同じように、ウィリアムズ症候群を記述するためには、私たちの子 どもが持っているユニークな特徴の数と同じくらいの単語が必要になると思われると記し ています。ウィリアムズ症候群の性格を好意的に記述した言葉には、ひとなつっこい・お しゃべり好き・愛想がよい・社交的・抑制的ではない・友好的過ぎる・世話好き・相手の 感情を理解する、などが含まれます。

この論文で著者等はウィリアムズ症候群の人の幸福感に関する概念をいろいろな角度 から探っています。最初に数人の逸話的な事例を取り上げ、よく用いられている言語的・ 非言語的表現による幸福感の質を読者に紹介しています。次に、この症候群に関連するそ の他の感情が述べられ、続いて感情における遺伝子の役割が議論されます。

最後に、著者等は「ウィリアムズ症候群の人たちから学んだ幸福感は教訓となるか?」 とうい問いに答えます。ウィリアムズ症候群の人が幸福感を持っていることはとてもよい ことで回りの人の幸福感を増加させることもできる一方、常にそれがウィリアムズ症候群 の人に伴う多くの障害を補う十分な緩衝材になるわけではない、とリバイン博士とワート ン博士は述べています。彼らから見てたくさんのとても幸福な経験を積んでいるにもかか わらず、感情面の脆弱さが原因でつらい局面を経験しているウィリアムズ症候群の人がい ることも紹介しています。「たぐいまれな幸福感を感じたり表現する能力は、全体として人 生の質を高める重要な一要素である一方、それが幸せな人生に直結するわけではない。学 習障害や身体的・精神的障害や不安感や普通の人とは異なる感情的気質などがあるために、 頻繁に濃密な幸福感を感じる一方で、たくさんの独特な問題を抱えている。サポートする 我々は、幅広い感情を体験できる機会・抑圧感を払拭するための十分な社会的援助・学業 的及び社会的に成功を体験できる十分な教育的援助・社会に貢献しているという満足感を 得るための十分な就労援助などを提供するべきである。」

著者等は、幸福感のすばらしい表現はウィリアムズ症候群の人に共通的にみられるが、 無条件に全員にあてはまるわけではない、と警告しています。実際にこの特徴を持たない 人が存在します。そして、この病気の診断を受けた人たちの症状には本質的な変化がある ことを見過ごすことはこの記事の意図するところではありません。ウィリアムズ症候群の 人はみんなそれぞれ独特なのです。



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