ウイリアムズ症候群、ダウン症候群、非器質的発達遅滞児及び正常児の母親の精神的ストレス
Parental Stress among mothers of children with Williams syndrome(WS), Down syndrome(DS), non-organic mental retardation, and non-disable children
Angela Gosch
Department Of Pediatrics, Christian-Albrechts-University of Kiel, Kiel, Germany
"Program and Abstracts" of 8th International Professional Conference On Williams Syndrome, Page 41
緒言:
子どもが精神遅滞であることは、家族に対して恒常的に適応することをもとめる
慢性的なストレス発生の原因となる。本研究では、異なる原因(ウィリアムズ症候群、
ダウン症候群、非器質的精神遅滞)による精神遅滞を有する子どもと及び正常な子ども
の母親が受けるストレスの量を評価した。
手法:
89人の母親が親のストレス指標(Parenting Stress Index:PSI)と児童行動チェッ
クリスト(Child Behavior Checklist:CBCL)に記入した。子どもの年齢・性別・WISC-R
の言語理解力に応じたグループが作られた。子どもの精神年齢(WISC-R)及び家庭の社
会経済的レベルに関するデータが集められた。
結果:
親の領域(愛着・役割の放棄・無力感・社会的孤立感・配偶者との関係・両親の健
康などの各尺度による)には顕著な違いは見られなかった。ダウン症候群の母親は意気
消沈(depression)面において他のグループより高いスコアを示した。
子どもの領域に関しては、ウィリアムズ症候群児の母親が感じるストレスが最も
高いという結果が出た。特に多動・情緒(mood)・受け入れられ易さ(acceptability)・
自己中心性(demandingness)・適応性(adaptability)の面で高いスコアを示す。受け入
れ尺度(acceptance scale)において、精神遅滞児の母親は正常児の母親に比べて顕著
に高いスコアを示す。どのグループも自分の子どもに対する経験から学ぶレベル
(revel of experienced reinforcement from their children)には違いが見られなか
った。
子どもの精神遅滞の程度は親のストレスと正の相関がある。しかし、家庭の社会
経済的レベルや子どもの年齢と精神的ストレスとの間には関連は見られない。
考察:
親の領域において、精神遅滞それ自体は精神的ストレスとは関係していないよう
に見える。
一般的に言って、精神遅滞の子どもの母親は(病因に関わらず)、正常児の母親に
比べて自分の子どもを受け入れることが難しい。しかし、その症候群の行動的表現型
に起因する特定の行動的な問題は母親の精神的ストレスに影響を与えている。
(2001年4月)
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