かかりつけの内科医はウィリアムズ症候群についてこれまでに耳にしたことがありますか?



Has Your Physician Heard of Williams-Beuren Syndrome?

Alquran L(1), Mallipudi RM(2).
Author information:
(1)Department of Medicine, Hackensack Meridian Health Mountainside Medical Center, Montclair, New Jersey.
(2)Department of Medicine, Yale School of Medicine, New Haven, Connecticut.
JACC Case Rep. 2020 Jul 15;2(8):1227-1228. doi: 10.1016/j.jaccas.2020.05.046. eCollection 2020 Jul.

休みになると子供の私は家族の集まりに参加し、孫たちは祖母の家の地階で遊びます。いとこのシンシア(プライバシーに配慮して彼女の名前は仮名です)に一緒に遊ぼうと声を掛けますが、彼女は参加することができません。彼女は年齢が進むと、定期的に病院に入院するようになりましたが、その時は何故なのかは知りませんでした。ほぼ40年後に循環器専門医に出会うまで、シンシアは診断を受けないままでした。

私が高校3年生のとき、シンシアは心房中核欠損と僧帽弁閉鎖不全の合併症の治療のためにずっと入院病棟に入院していました。若い循環器専門医がシンシアの同室患者の回診に来た時に、朝食を終えたシンシアを一目みやりました。病室を離れる前に、彼は家族に歩み寄ってこう言いました。「私がウィリアムズ症候群を診るのはこれが初めてです。」

家族は困惑しました。診断名が提示されたのはこれが初めてだったからです。ウィリアムズ症候群は多臓器に影響がある遺伝子疾患であり、26個から28個の遺伝子を含む1.5〜1.8百万塩基ペアの範囲の染色体欠失が原因です。この症候群はおよそ1万人に1人の割合で生まれ、微小欠失症候群や隣接遺伝子症候群に分類されます。

この症候群は1961年にJohn Cyprian Phipps Williams医師によって初めて記述されました。彼は循環器異常、精神の「亜正常」、成長遅延を有する患者を記述しました。シンシアは1965年生まれで、その時まで本質的な診断名を聞かないままでした。この若い循環器専門医は患者の特徴的な顔貌、すなわち、長い人中と厚い口唇からなる幅の広い口に代表される「妖精用顔貌」と古典的に言われている顔貌を元に瞬時にこの病気を診断しました。

循環器疾患の種類の範囲が広いことが典型的です。大動脈弁上狭窄はウィリアムズ症候群患者のおよそ70%にあると言われています。平滑筋の過剰成長を起因とする血管中膜の肥厚が原因で、大から中規模の血管に狭窄が存在します。動脈の狭窄は広範性で、下行大動脈、動脈弓、腸間膜動脈、頭蓋内動脈に及びます。何例かの症例では、動脈狭窄が単離します。すべての症例で全身性エラスチン動脈症に関連する頸動脈の内中膜複合体厚が増加します。心室や心房の中核欠損はまれです。僧帽弁や大動脈弁の小葉の原始間葉状変性は患者の20%で見つかります。高血圧症候群は幼少期に始まり、患者全体のほぼ半分に診られますが、高血圧の原因は完全に究明されたわけではありません。これらの患者の主要な死因は循環器系の合併症です。

私は病院内でのシンシアの出会いを思い起こし、この循環器専門の内科医にとても強い称賛の意を覚えます。彼は患者を治療するだけではなく、患者やその家族が直面する医学的な疑問や問題に明確な答えを提供してくれます。私は良識と透明性の代弁者になりたいと思いました。その道を行くことに、どんなに時間がかかろうと、どれほどたくさんの困難と拒絶が待っていようと、私は循環器専門医になることが天職だと感じて、その道に進むことを肝に銘じました。天命と責任を引き継ぎ循環器専門医として医学の分野に進むことに誇りを感じています。

そのために、私はニューヨーク市のポート・リッチモンド高校に進学しました。ここは公立高校でその卒業生の約半数が生物医科学の学位を得ています。その後、メキシコのグアダラハラにある医学校に進学し、医学を学ぶとともに、新しい言語と文化に浸りました。

私は今、実家の近くのニュージャージで研修を終えて内科の病院研修医(resident physician )の2年目になります。忘れもしないシンシアが診断を受けた瞬間と同じような出会いが毎日あります。私は毎日、できる限りの新たな知識を得ること、そして健康維持システムの改善と循環器医療の分野の発展に寄与する様々なプロジェクトに深く参画するという意欲をもって毎日働いています。まもなく応募する循環器専門医になるための研修申請の準備として、ここまで私を導いてきたことに思い起こして、微笑みました。これまで私はこの物語を仲間である研修医や担当指導医に話すことが好きでした。驚いたことに、私とかかわった内科医一人だけではなく、ほとんどの先輩がウィリアムズ症候群の患者と出会っていました。

私はシンシアを誇りに思い、彼女の病気の知名度を上げ、医学界にいる内科医からもたらす些細な瞬間が若者の人生をどのように変えているかを分かち合いたいと思います。迷える17歳に新たな目的意識をもたらしてくれた循環器専門医の影響力に感謝したいと思います。

(2021年8月)



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