Williams症候群の包括遺伝子医療
松岡 瑠美子
東京女子医科大学循環器小児科学教室
「医学のあゆみ」 Vol.191 No.5 1999.10.30, Page 533-538
雑誌の記事の段落毎にトピックスを拾い出しました。必ずしも要約にはなっていません。
この雑誌は東京都立中央図書館に収蔵されていました。
(1999年12月)
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■ Williams症候群とは
- 高血圧が年長患者の30%に認められる。
- 心疾患を伴わない例では、学習障害(LD)や注意欠陥多動症候群(ADHD)と診断
されていることもある。
■ Williams症候群における疾患遺伝子の発見
- 高血圧、動脈硬化・糖尿病などの生活習慣病が早期に発症する危険性があること
が多い。
■ 第7染色体q11.23領域における欠失の範囲の決定
- 65人の患者を経験。
- 欠失領域の大きさは、61人が3Mb、3人が1.7Mb、1人は欠失を確認できず。
■ Williams症候群に関する包括遺伝子医療プロジェクト開始の契機
- 落ち着きがなかった9才の男児が、4年間の音楽療法を経て、落ち着きが出て、視
空間認知障害、特異的認識パターンの改善努力が見られた。音楽療法との関連を
含めて症状が改善した理由は不明である。
- 象の絵の模写結果を、欠失領域の大きさ異なる5人の患者(11才女、12才女、21
才女、35才女、上記の男児の11才時点と13才時点)で比較した図。
- 上記男児の聴音テストの結果。彼は楽譜を読める。
■ Williams症候群に関する包括遺伝子医療プロジェクトの内容
- 本症候群に特有の視空間認知障害、特異的認識パターンや記憶力に関する神経心
理学的探索(視空間認知、図形認知、漢字構成、知能検査、前頭葉機能、潜在学
習)、脳神経学的探索(脳血流、脳、頭頚部血管の形態)、循環器学的探索(心臓、
大血管、中・小血管の形態及び血管壁の肥厚、交感神経機能、抹消血管拡張機能)、
内分泌代謝の探索、聴力、音楽感受性に感する検査を循環器小児科、小児科、脳
神経内科、眼科、耳鼻科、歯科の6科と音楽の先生、検査部門、医療ソーシャル
ワーカを含めできるだけ短期の入院(1週間以内)ですべての検査を終了し、そ
の後、一人一人の患者についてすべての検査担当者がそれぞれの結果をまとめと
持ち寄り、総合的に検討し、その結果を患者と家族に説明し、症状の改善を含む
治療、予防、さらに患者の保育、教育に役立てる。
- これまでに12人が一連の検査を終了。
- ストレスホルモンの放出が多い。精神的ストレスが原因か、欠失遺伝子の影響か
は不明。
■ おわりに
- 包括的遺伝子医療は、治療、予防、保育、教育に総合的に役立てうる。
■ サイドメモ 包括的遺伝子医療
分子・細胞遺伝学的手法を用い、配偶子、接合子、胎生期、小児期、成人期、老年期
のステージに沿って遺伝子情報をもとに遺伝的疾患の成因の解明ならびに疾患を包括
的に理解するホリスティック医療システムを包括的遺伝子医療と定義する。包括的遺
伝子医療の導入により、早期の遺伝子診断、治療、発症前診断に基づく疾患の発症予
防の検討が可能になる。包括的遺伝子医療の進展はまた、疫学を背景に精神心臓病学、
精神免疫学、社会生態福祉医学を発展させ、環境危険因子学の進歩を促し、予防医学、
福祉医学の発展に貢献するものと思われる。今後21世紀に向けてきわめて重要な医療
の進むべき姿であると考える。
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