ウィリアムズ症候群
Williams Syndrome
Colleen Morris
Department of Prdiatrics, Division of Genetics, University of Nevada School of Medicine, Las Vegas, Navada
Management of Gnetics Syndrome, Secont Edition(ISBN 0-471-30870-6) 655-665
ウィリアムズ症候群は、ウィリアムズ−ビューレン症候群、特発性高カルシウム血症、大動脈弁上狭窄症候群などと呼ばれてきた。出産に10,000回に1回の割合で発生すると見積もられている。ウィリアムズ症候群の診断は顔貌異形特徴、発達遅滞、家系と比較しての低身長、結合組織の異常、独特の認知プロフィール、共感・極度のひとなつっこさ・注意欠陥・不安などを含む典型的な人格などの特徴的パターンを確認することを基本としている。顕微鏡では見えないサイズの染色体7q11.23欠失が原因であり、この欠失は大規模なDNA反復が存在する領域における不等交差によって起こる。典型的な欠失領域は、150万塩基対(Mb)の大きさで、これまでに21個の遺伝子がマップされている。ウィリアムズ症候群に伴う症状の多くはエラスチン遺伝子の欠失に起因する。
中略
症状と治療
成長と哺乳・摂食
家系と比較しての低身長がウィリアムズ症候群には共通的にみられ、成長速度は正常な場合の75%(Jones and Smith, 1975)である。長期的及び横断的なデータを用いた成長に関する研究によれば、最終的な平均身長は3パーセンタイル以下(Morris et al.,1998, Pankau et al.,1992)である。ウィリアムズ症候群における成長パターンは、25〜70%に出生前における成長障害、生後2歳から4歳における身長や体重の伸びが悪いことが特徴である。その後子ども時代に身長の伸びは改善するが、それでも70%は両親の平均身長の3パーセンタイル以下に留まる。骨年齢検査の結果は正常であり、通常であれば頭囲は身長と釣り合っている。ウィリアムズ症候群において思春期は早く始まり、これは平均よりも成長加速時期が短いことと関係している(Pankau et al.,1992)。ウィリアムズ症候群の成長曲線が参照できる(Morris et al.,1998; Saul et al, 1998; Pankau et al.,1992)。
ウィリアムズ症候群の乳幼児における体重増加不良と成長不良は重度の摂食障害が原因である傾向がある。甲状腺機能低下症や成長ホルモン不足が報告されている(Kuijpers et al,1999)ことから、成長曲線から極端に外れる場合は検査を受けることを勧める。
成長障害(80%)、摂食障害(70%)、遷延性疝痛(70%)がウィリアムズ症候群においては乳児期に共通してみられ(Morris et al.,1998)、この年齢群における消化器系の合併症には胃食道逆流症、便秘、直腸脱がある。幼児期には食感に関する感覚嫌悪が不利に働き、固形食への移行に影響を与える。顎や首の異常な体位・姿勢がのどの詰まらせを誘発し、歯科的不正咬合や定常的な舌の突出現象によって効率的な咀嚼や嚥下が損なわれます。
摂食障害は胃食道逆流症や高カルシウム血症の治療と口腔/運動療法や食事療法を組み合わせることで改善する。高カルシウム血症や高カルシウム尿症は時間とともに快方に向かうことが多いが、再発する可能性もある。
評価
- 身長測定結果をウィリアムズ症候群成長曲線チャート上に書き込み、下限範囲を下回る場合は、甲状腺機能検査を含む診察を受け、必要に応じて成長ホルモン検査も受けるべきである。
- 乳児の場合は口腔/運動機能や摂食を評価する。
- 成長障害がある場合は、総合的な栄養及び摂食評価を受けるべきである。
- 最初の臨床検査時には、甲状腺機能検査、血清カルシウム、カルシウム/クレアチニン比測定を目的とした無作為スポット尿検査を含む。
- 成長障害があるウィリアムズ症候群の乳児は栄養士と相談し、通常の食事におけるカルシウム吸収量評価を行う。その際に、特定の地域においては重要になる飲み水に含まれるカルシウム量も考慮に入れるべきである。
治療
- 乳児においては、高カロリーの食事を少量ずつ回数多く与えることを勧める。
- 食事療法および口腔/運動療法を実施すべきである。
- のどを詰まらせることが多いウィリアムズ症候群の子どもにはピューレ状の食事を与える期間を長めに取るべきである。
後略
(2006年5月)
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