先天異常症候群の包括外来
大橋 博文、大橋 裕子
埼玉県立小児医療センター遺伝科
日本小児科学会雑誌 第109巻 第2号 158ページ(2005年2月)
【目的】
先天異常症候群では自然歴情報に基づいた健康管理、療育的支援や社会資源への連携、さらには家族の心理的サポートも含めた包括的な支援が重要となる。しかし通常の個別外来の枠組みではそのニーズへの十分な対応は容易ではない。この状況の克服のために先天異常症候群の包括外来を試みている。
【方法】
比較的頻度が高く疾患概念の確立した先天異常症候群であるWilliams、Kabuki、22q11欠失の各症候群を対象に、各々について半年に1度のペースで継続的な専門外来を開催する。外来の構成は、1)テーマを決めた集団外来(1時間30分;この間保育を開催)、2)その後個別診断と平行して家族の交流できる場を提供することとする。また互いに連絡がとれるように外来参加者内の名簿を作成し(希望者)、毎回アンケートをとって家族からの要望を集団外来のテーマに反映させる。
【結果】
現在までに上記3疾患につき各々2回ずつ計6回の包括外来を行った。集団外来のテーマは、疾患と健康管理について、本人や周りの人への病気の説明の仕方について、地域での生活・福祉情報について、家族の体験談とフリートーキング(テーマの重複あり)をとりあげた。6回の外来を平均すると、一回の外来の参加家族数は14家族(参加率は45%)、学校の担任などの関係者2人、保育希望者9人、保育ボランティア6人であった。
【考察】
集団外来にはまとまった情報の提供による病識の形成の増進とともに家族間の交流による心理的支援となるメリットがある。今後集団外来を活用した継続的な包括外来を対象疾患を広げて実施していきたい。
(2006年7月)
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