Williams Syndrome
宮之原 郁代、黒野 祐一
鹿児島大学大学院医歯学総合研究所科先進治療科学専攻感覚器病学聴覚頭頸部疾患学
耳鼻咽喉科・頭頸部外科 第78巻 第5号 302ページ(2006年増刊号「症候群事典」)
定義・概念
遺伝性の神経発達障害で、しばしば軽度から中程度の精神発達遅滞を伴う。
病因・病態生理・疫学
7番染色体長腕q11.23の微細欠失による隣接遺伝子症候群である。欠失領域はエラスチン遺伝子(ELN)が存在し、その欠失による心血管病変が突然死の原因として示唆されている。罹患率は、出生1〜2万人に1人とされる。
病状
心血管病変(大動脈弁上狭窄、肺動脈狭窄)、乳児期の高カルシウム血症、低身長、発達障害を主徴とし、そのほか眼症状(内斜視、遠視)、耳症状(中耳炎、聴覚過敏)、不正咬合、歯牙低形成、摂食障害、皮膚弛緩、若白髪、関節弛緩、関節拘縮、思春期早発などが50%以上の症例にみられる。感音難聴については、成人において同世代の健常人に比べて難聴の程度が高度でかつ頻度が高いことが知られているが、小児期にすでに70%以上の症例で感音難聴の発症がみられ、進行性であることが示唆されている。
診断
特徴的な症状に基づき臨床的に診断する。また、FISH(Fluorescence in situ hybridization)によって99%の患者でELNの欠損が確定されている。
治療
予後
Williams症候群の患者293人、延べ5,190患者・年(患者数×観察年数)のうち、突然死は1/1,000年とされ、一般集団の突然死リスクの0.01〜0.04/1,000年の25〜100倍、小児期に手術を受けた先天性心疾患の0.9/1,000年とほぼ同等のリスクと考えられている。
(2006年8月)
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