Williams症候群



近藤郁子(茨城県立こども福祉医療センター)
別冊 日本臨床 新領域別症候群シリーズ No3、内分泌症候群(第2版)V(2006年9月)、440-443ページ



5.健康管理・理療と予後

Williams症候群の病態と臨床症状は加齢とともに変化するので、Williams症候群と診断された場合には、年齢にかかわらず生涯にわたる養育体制の確立が大切である。疾患原因に対応する治療はないが、生活環境の整備や生活支援により、能力に即した生涯を全うすることができる。しかし、内科および神経科の検査として成長パラメータの測定、心臓の検査として心臓専門医による四肢の血圧測定、ドップラー血流検査を含む断層心エコーなどの循環器系の検査、尿検査と腎機能検査、甲状腺機能検査、眼科検査などの健康管理を必要とする。

そのほかに、継続的な検査として、斜視、遠視の矯正、反復する中耳炎の治療と聴力スクリーニング、不正咬合、欠損歯、歯牙形成不全、齲歯などへの歯科検診などがある。更に、胃の逆流も生じやすく、裂孔ヘルニアや憩室症、憩室炎などによる嘔吐、腹痛の可能性を考慮する必要がある。慢性便秘の防止には食事療法が大切である。腎臓病や高カルシウム尿症などの早期診断のためには、尿検査、血液尿素窒素(BUN)値、クレアチニン測定値とともに超音波検査も必要になる。

小児期から様々な発達段階の遅れが発現し、発語や言語の遅れが初期に見られるが、3〜4歳頃には発語機能は比較的高い能力を示すようになり、聴覚や暗記記憶も優れるが、空間構造の構築は苦手である。文字を読むことはできるが書くことは困難である。一方、行動異常は早期から始まり、感覚的嫌悪(音や細かい反復した模様に対する過敏)、非情に狭い領域に示す興味、持続的不安感、注意力欠損、大人に対する警戒心のなさなどが問題となる。社交的で人なつっこい人の良さから、人に利用されたりだまされたりする危険性がある。これらの特徴を十分に理解して教育環境を調えることによって、独立した社会生活が可能である。

しかし、少数の患者は大学教育を受けて職業についているが、多くは両親と同居しながら補助的作業に従事するとか、共同生活を行いながら職業訓練や作業療法を受けており、自立した社会人としての生活は難しい。すべての生活習慣病の予防や定期検診により、生命予後は良好である。

(2006年9月)



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