Williams症候群の表現型:心疾患およびその他年齢別に注意すべき症状の頻度
抄録以外の部分が入手できたら後ほど紹介します。
(2009年5月)
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平成17-19年度研究課題報告
Williams症候群の表現型
心疾患およびその他年齢別に注意すべき症状の頻度
上砂光裕, 新垣義夫, 市田蕗子, 小穴慎二, 小川潔, 小野安生, 小山耕太郎, 黒江兼司, 小林俊樹, 城尾邦隆, 白石公, 中川雅生, 中島弘道, 野村裕一, 早渕康信, 総崎直樹, 古谷喜幸, 古野憲司, 前田潤, 松裏裕行, 松岡瑠美子, 村上智明,森克彦, 安河内聡, 安田謙二, 安田東始哲, 山岸敬幸, 藁谷理, 中西敏雄 (日本小児循環器学会), 中西敏雄 (東京女医大 医 循環器小児科)
日本小児循環器学会雑誌:Vol.25, No.2, Page224-226 (2009.03.01)
全国の心血管疾患の遺伝子疫学委員会委員を対象に、Williams症候群に伴う症状の特徴に関するアンケート調査を行った。2008年6月末までの約3年間に126症例の回答を得た。これらについて、心血管系以外の症状、大動脈弁狭窄、末梢性肺動脈狭窄、大動脈弁上狭窄及び末梢性肺動脈狭窄以外の心血管疾患、同胞内発症,及び遺伝子型に関する調査結果を報告した。
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本文が入手できたので図表を除いて紹介します。
(2009年7月)
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はじめに
Williams症候群は、心血管病変(大動脈弁上狭窄:SVAS、末梢性肺動脈狭窄:PPS)、妖精様顔貌、精神発達遅滞、低身長を主徴とする先天性症候群である。本症候群においては年齢別に注意すべき症状があり、心血管症状の加齢に伴う変化についても留意する必要がある。これらWilliams症候群に伴う症状の特徴を明らかにする目的で本研究を行った。
対象および方法
全国の心血管疾患の遺伝子疫学委員会委員にWilliams症候群における心血管疾患を含む表現型、遺伝子型について、表1に示す項目のアンケート調査を実施。2008年6月末までの約3年間に回答いただいた下記12施設の結果を検討した。総症例数は126例(男63例、女63例)で、心血管症状については全例、心血管以外の症状については114例で回答いただいた。年齢別に0〜5歳34例、6〜12歳46例、13〜19歳30例、20〜42歳16例(心血管以外の症状についてはそれぞれ30、45、27、12例)の4グループに分けて検討した。
調査協力施設(順不同):あいち小児保健医療総合センター、鹿児島大学、九州大学、九州厚生年金病院、慶應義塾大学、埼玉県立小児医療センター、榊原記念病院、千葉県こども病院、東京女子医科大学、東邦大学医療センター大森病院、富山大学、長野県立こども病院
本研究は、日本小児循環器学会倫理委員会ならびに心血管疾患の遺伝子疫学委員会委員長・中西敏雄が在籍する東京女子医科大学の倫理委員会の承認を得た。
結果および考察
1.心血管系以外の症状
心血管系以外の症状については、妖精様顔貌の頻度は20歳未満で80〜90%と高かったが、20歳以上では50%と有意に低かった。精神発達年齢は全年齢を通じて70%以上であった。低身長は5歳以下の45%に認められ、6歳以上の25%前後と比較して高頻度であった。高脂血症や糖代謝異常が、5〜10%の症例で小児期から認められ、一般集団に比べて高いと思われた。骨格系の異常は20歳未満での報告はなかったが、20歳以上では25%に認められた。
2.大動脈弁上狭窄
大動脈弁上狭窄は全126例中100例、5歳以下の例において74%に、成人例では88%に認められた。大動脈の圧較差は幼児・学童期から大きい例もあるが、加齢とともにその例数が増える傾向にあった。これらは従来の報告に矛盾しない結果であった。100例のうち19例で手術を要した(Myers法5例、Dotty法3例、その他)、大動脈弁上狭窄のタイプは80〜90%が砂時計型で、残りは低形成であった。
3.末梢性肺動脈狭窄
抹消性肺動脈狭窄は加齢とともに減少する傾向にあり、軽症化する例があるとの従来の報告と一致していた。幼児・学童期からの圧較差が大きい例も認めるが、加齢とともにその例数は減る傾向にあった。今回の検討では62例が報告され、うち5例が手術。カテーテルによる治療を受けていた。
4.大動脈弁上狭窄および末梢性肺動脈狭窄以外の心血管疾患
大動脈弁上狭窄および抹消性肺動脈狭窄以外の心血管疾患として、心室中隔欠損少6例、心房中隔欠損症5例、心内膜床欠損症(完全型)1例、両大血管右室起始例1例、大動脈狭窄症3例、僧帽弁閉鎖不全4例、肺動脈弁狭窄症2例、大動脈弁上閉鎖不全2例、僧帽弁逸脱6例、大動脈弓狭窄1例の報告があった。また、もやもや病1例、眼底動脈の蛇行(軽度)2例の報告があった。
5.同胞内発症
一卵性双胎の報告が2家系あり、FISH法(WSCRプローブ)で確定診断されていた。家系1は4歳の姉妹で、ともに大動脈弁上狭窄、抹消性肺動脈狭窄を有しており、姉の大動脈弁上狭窄圧較差27mmHg、抹消性肺動脈狭窄圧較差46mmHg、妹の圧較差はそれぞれ78mmHgと44mmHgであった。家系2は4歳の兄弟で、兄が心房中隔欠損症と心房中隔欠損症、弟が大動脈弁上狭窄(圧較差30mmHg)を呈していた。
6.遺伝子型
遺伝子型については、今回のアンケートでは、FISH方での診断の有無と、その方法を調査した。ほとんどの施設でSRLを介してWSCRプローブを用いちゃFISH法で診断していた。Williams症候群に関しては、特徴的な心血管疾患および全身症状から、遺伝子検査による確定診断への流れが、多くの小児循環器施設で確立していることがうかがわれた。
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