Williams症候群の新生児期の病像
川目 裕1)、西 恵理子1)、中村 友彦2)
長野県立こども病院総合周産期母子医療センター 遺伝科 1)
同 新生児科 2)
日本未熟児新生児学会雑誌 第20巻 第3号 677ページ
【背景】
Williams症候群(WS)は、先天性心血管疾患(大動脈弁上狭窄、末梢性肺動脈狭窄など)、成長障害、発達の遅れ、腎尿路系形態異常、高カルシウム血症、顔貌の特徴、過敏症、人見知りが少ない、雑音が苦手等などの認知・性格面の特徴を有する先天異常症候群である。7番染色体p11.2のelastin遺伝子を含む微細欠失が原因である。本症候群は、外表性の多発先天形態異常を伴わず臨床所見の多様性から新生児期の診断は困難とされる。新生児期の病像を明らかにするために臨床像の検討をおこなった。
【対象・方法】
当院、周産期センターを受診、あるいは加療を受けて、WSと診断された5例(女児:男児=3:2)の診療記録を検討。
【結果】
出生前の所見としてはIUGR(2例)、心疾患(1例:AP window、大動脈離断)。出生時の在胎期間は31週0日から40週6日(平均;36.3週)で、全例SGAであった。RDSの診断で呼吸管理(3例)を受けていた。出生時には認めなかったが入院中に抹消性肺動脈狭窄、大動脈弁上狭窄が3例で出現し、1例は退院後5ヵ月時に心雑音から見出された。2例のみ新生児期に新生児科医師から顔貌の指摘を受けていた。WSの診断は、全例、新生児期にはなされず、平均診断年齢は2歳2ヵ月(11ヵ月〜3歳8ヵ月)。診断の契機は、大動脈弁上狭窄の心疾患(2例)、特徴的な発達面(1例)、発達の遅れ(1例)、成長障害(1例)であり、その際には全例特徴的な顔貌を認識できた。
【考察】
WSは新生児期に診断は困難であった。WSは多臓器に症状を呈する症候群であり早期診断は重要と考えられる。新生児・乳児期には、特徴的心血管異常とSGAよりWSを疑うことができる。
(2009年7月)
(参考)
IUGR:子宮内胎児発育遅延
AP window:大動脈肺動脈窓
SGA:胎内発育遅延
RDS:呼吸窮迫症候群
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