ウィリアムズ症候群(「指定難病179」)
進藤 考洋
日本医師会雑誌 148巻 特別1 指定難病ペディア2019 S302ページ
疾患概念
染色体7q11.23領域の微細欠失によって、以下に示すような特異的な顔貌、大動脈弁上部狭窄、精神発達遅滞などの表現型を呈する症候群である。
症状
- 妖精様顔貌:広い前額、内眼角間解離、短い眼瞼裂、腫れぼったい上眼瞼、鼻根が低い、長い人中、厚い口唇、小顎など。
- 低身長:20〜30%前後で子宮内発育遅滞を起こし、2歳以降の成長は3パーセンタイルに留まる。
- 循環器合併症:大動脈弁上部狭窄と末梢肺動脈狭窄が特徴的(70〜80%)で、時に心中隔欠損などの先天性構造異常を合併することがある。そのほか、腎動脈や腹部大動脈の狭窄からくる高血圧や、脳血管障害を合併することがある。
- 特徴的な認知・発達:運動発達において軽度の遅れを示すことが多い。平均的な知能指数は多くの研究で全検査IQ(FSIQ)50〜70と報告されており、性格は概して社交的であるが、衝動的あるいは注意欠陥傾向が多く認められる。高音領域を苦手とする聴覚過敏により、遮音ヘッドホンを要するケースもある一方で、高度な音感を駆使して音楽演奏を得意とする人もいる。視力についても発達の遅滞が認められるほか、内斜視や外斜視の合併が多い(50〜80%)。視空間認知機能が低下しており、模写や計算は苦手である。
- 側彎症:成長とともに側彎をきたすことがある。
- 高カルシウム血症、高カルシウム尿症を呈する場合がある。
治療
進行する大動脈弁上部狭窄症に対して、手術治療を要する場合がある。精神発達遅滞や運動発達遅滞に対する療育サポートを要する。側彎症候群に対して矯正手術を要する場合がある。カルシウム代謝異常を呈する場合には、対症療法を要する場合がある。
重症度・予後
最大の生命予後規定因子は合併する心疾患である。臨床的には、大動脈弁上部狭窄症が進行性である場合が問題であり、末梢肺動脈狭窄については、時間経過とともに軽症化することが多いとされる。
(2019年9月作成)
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