Molecular definition of the chromosome 7 deletion in Williams syndrome
and parent-of-origin effects on growth.
Perez Jurado LA; Peoples R; Kaplan P; Hamel BC; Francke U
Department of Genetics, Stanford University School of Medicine, CA, USA.
Am J Hum Genet (UNITED STATES) Oct 1996, 59 (4) p781-92, ISSN 0002-9297
Languages: ENGLISH」
Document type: JOURNAL ARTICLE
ウイリアムス症候群(以下 WS) は発達障害を伴なう病気であり、たいていの場合、エラスティ
ン遺伝子(ELN) を持つ染色体の 7q11.23 部分の半接合欠失を含むさまざまな遺伝子配列が原
因で発生する。欠失の大きさと発生頻度、遺伝子の由来(父親からか母親からか)の特定、分子
病理学的な結果と臨床的な症状との相関を、65人の WS 患者に関して調査した。ELN 部位
に半接合があることは、サザン法やFISH法という、遺伝子工学的手法によって分析された。欠
失部分とその両端の(遺伝子ではない)領域をカバーする多形マーカーは、遺伝子工学的な方法
と物理的な方法の組み合わせで作成されている。WS 患者と一部の両親に対して13種の多形マ
ーカーによる遺伝子型調査の結果、臨床的に診断された65例の WS 患者のうち、61例(9
4%)に ELN 遺伝子の欠失と、D7S489B, D7S2476, D7S613, D7S2472, D7S1870 の部位
の半接合(もしくはその疑い)が見られた。ELN の欠失が見られない4人の患者には、多形遺
伝子調査を行なっても半接合は見られなかった。全ての患者は、中央部側(D7S1816, D7S1483,
D7S653) 及び末端部側(D7S489A, D7S675, D7S669)の(ELN)遺伝子に連なる部位は異形接合
(あるいはその疑いがある)がある。欠失している遺伝子の最も中央部側(D7S489B)と、最
末端部側の部位(D7S1870)との遺伝子の距離は 2 cM (センチモルガン)である。欠失の両
端は、ELN のどちらの端からも、おおよそ 1 cM のところである。39家族については、欠失
がある染色体がどちらの親に由来するかが調査できた。これらの欠失は、すべて新しく発生した
(遺伝されたのもではない)であり、18例が父親由来、21例が母親由来であった。正規化さ
れた方法で集められた臨床データを比較してみると、母親由来の遺伝子に欠失があるグループの
ほうが、明らかに体格の成長の遅れや小頭症の程度が重い事が判明した。インプリントされた(機
能が発現しない)遺伝子(父親由来の染色体上にあって、体格の成長に関与するもの)の部位が、
この欠失によって影響を受けている可能性がある。」
訳者注
- 7q11.23
- 7番染色体の長腕(q)の第1領域のバンド1にある。23はその中の部位を示す。
- 半接合
- 通常は、男性の X 染色体上にある遺伝子の場合で、対応するもう一つの 遺伝子を持たないことをいう。この例では、片方の染色体上の遺伝子が 欠失しているため、1対の対応する遺伝子がないことを示す。
- 異形接合
- 父親と母親からそれぞれ、一対ずつ違った遺伝子をもらって、一本の染色体 (あるいはその一部)を形成していること。
- 中央部側・末端部側
- 動原体(Xの形をした染色体の交点の部分)に近い方が中央部、遠いほうを 末端部側という。
- インプリント
- 遺伝子は存在するが機能を発揮しない(蛋白質を合成できない)状態。
- cM
- センチモルガン。遺伝子上の距離のこと。物理的な単位ではなく、相対的な 距離であり、遺伝子同士の交差(2本の染色体間で起こる入れ替え)の起こ りやすさを示す。1% の交差に相当する距離を1地図単位または 1cM と呼ぶ。 1cM は、およそ1000Kb(キロベース)である。b (ベース)は、一対の塩基 (A,C,T,G)を示す単位で、塩基3つで、一つのアミノ酸が決定される。 一つの遺伝子の大きさは、1Kb 程度から 200Kb程度である。