ショウジョウバエのfrizzled遺伝子(wingless蛋白質と結合するwnt レセプター遺伝子)と相同性を持つ新しい遺伝子が、ウイリアムス症候群患者の欠失領域(7q11.23)から発見された

A novel human homologue of the Drosophila frizzled wnt receptor gene binds wingless protein and is in the Williams syndrome deletion at 7q11.23.

Wang YK; Samos CH; Peoples R; Perez-Jurado LA; Nusse R; Francke U
Howard Hughes Medical Institute, Stanford University Medical Center, CA 94305, USA.
Hum Mol Genet (ENGLAND) Mar 1997, 6 (3) p465-72, ISSN 0964-6906
Languages: ENGLISH Document type: JOURNAL ARTICLE



ウイリアムス症候群(WS)には、特徴的な性格と認知傾向を持つ発達障害があり、多くの場 合、染色体の7q11.23部分の2Mbの欠失を伴う。欠失領域から取り出したコスミド (cosmids) に CpG island クローニング法を適用することで、FZD3 と呼ばれる新しい遺 伝子を同定した。11人のウイリアムス症候群の発端者から取り出した DNA の定量ブロ ットの結果、この遺伝子は共通的な欠失領域に存在することが確認された。配列比較を行 った結果、591個のアミノ酸で構成されている FZD3 は、7回膜通過ドメイン受容体ファ ミリーの新しいメンバーであり、ショウジョウバエの器官極性遺伝子frizzledと相同性を 持つ哺乳類の遺伝子であることがわかった。FZD3 は、主に脳・睾丸・眼・骨格筋・腎臓 で発現する。最近、frizzled はショウジョウバエにおいてwingless(wg)蛋白質の受容体で あると同定された。人間と同じくショウジョウバエの細胞においても、FZD3 をトランス フェクションさせて発現した場合、wg蛋白質と結合することを示した。マウスでは、wg と相同な Wnt1 遺伝子は、中脳と上部後脳のほとんどを取り巻く中枢神経系の大部分の初 期発達段階に現れる。FZD3の潜在的な機能として、Wnt 蛋白質の作用を人間の脳や他の 器官にあてはめて考えた場合、FZD3 遺伝子の片方が欠失していることがウイリアムス症 候群の表現型に影響をあたえている可能性がある。

(1997年7月)

訳者注: