ウイリアムス症候群患者児の臨床症状の分布と遺伝子多型
岡崎 伸1)、富和 清隆1)、九鬼 一郎1)、池田 浩子1)、川脇 壽1)、岡田 眞子1)、今村 卓司2)、澤田 好伴3)
大阪市立総合医療センター小児神経内科 1)
大阪市立総合医療センター新生児科 2)
大阪市立総合医療センター小児内科 3)
日本小児神経学会総会プログラム・抄録集 第48巻(2006年6月1〜3日)S312ページ
(能と発達 第38巻 総会号)
ウイリアムス症候群(以下WMS)はELN遺伝子を中心に、7q11.23領域に隣り合う遺伝子の欠失により生じる隣接遺伝子症候群である。妖精様の顔貌をもち、発育・発達面に加え、認知、空間視覚化、感覚面(音・触覚)に特徴的な障害を示す。また、多弁で成人との社交性が極めて高い。東京女子医大の松岡らの先行研究では、WMSには非典型的な遺伝子欠失がみられ臨床症状も典型例と異なる。当科には療育を主訴としたWMS児が通院しているが、典型的WMS群と比較し異常行動が強いと考える。このような症例群の臨床的特徴をまとめ、phenotypeとgenotypeの比較についても試みた。
【対象と方法】
2000年〜2005年に当科を受診しWMSと診断した症例。FISH法によるWMS診断確定後、療育相談を平均3回実施。新版K式発達検査2001、生育暦と行動上の問題の聴取および直接的観察を行い、臨床症状の分布をまとめた。また、ELN遺伝子に隣接する16の遺伝子の欠失を定量的PCR法を用いて検討した。
【結果】
対象は61名で、うち遺伝子検査に同意されたのは38例。臨床症状として、先天性心疾患、脳梁欠損、脳波異常、難聴、内斜視などがみられた。また、知的機能水準は前DQ11から64と幅広く分布し、本症に特徴とされる社交性に加えて自閉症状を示す児を認めた。遺伝子検査は解析中でphenotypeとの対比には至っていない。
【考察】
現在WMSの診断はFISH法(ELN遺伝子の欠失に対応)により確定されるが、臨床症状のスペクトラムは広く、時には社交性と自閉性という対極の症状を呈する児が存在し、phenotypeは多様であると考えられた。我々の遺伝子解析の評価は現時点では不十分であるが、先行研究の対照群に比較して、神経合併症・発達障害が重度な例が多く、これらの症状発現の理解に有用であると考える。
(2006年9月)
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