脳機能と遺伝子多型の関連の研究 2.言語と転写因子(GTF2IRD1)



賽藤 雅文、武本 環美、濱本 香織、中島 大輔、吉良 龍太郎、鳥巣 浩幸、酒井 康成、岩山 真理子、原 寿郎
九州大学大学院医学研究院成長発達医学分野
九州大学大学院医学研究院脳神経病研究施設臨床神経生理学教室
脳と発達 第38巻 総会号; S192ページ(2006年6月)

Williams症候群は比較的良好な言語機能を持つことが良く知られているが、発達歴においては言語の遅れを認め、正常とは異なる言語獲得をすることが指摘されている。また最近、Williams症候群責任領域(7q11.23)の重複に関連して著しい表出性言語障害を呈する症例が報告され、その領域に遺伝子が存在する、転写因子のGTF2I及びGTF2IRD1が言語発達に関与することが予想されている。我々はこの2つの遺伝子のうち、アミノ酸置換を伴いかつ頻度の多い一塩基多型(SNP)が存在するGTF2IRD1の遺伝子多型と健常人における言語機能の関連について検討した。健常な大学生102人(女51人、20-24歳)を対象に、語流暢課題(1分以内に産出される語の数:ある頭文字(し、い、れ)で始まる語、あるカテゴリ(動物、果物、乗り物】に属する語)を施行した。次に同意を得た上でDNAを抽出し、TaqMan(R)SNP Genotyping AssayにてGTF2IRD1遺伝子上のアミノ酸置換(Val/Met)を引き起こすSNPを解析した。Met/Met群では、それ以外の群(Val/Met+Val/Val)に比べて、課題の成績(産出される語の総数)が有意に良好であった。Williams症候群責任領域にあるGTF2IRD1の多型が、健常人の言語機能に影響している可能性があると考えられた。

(2006年11月)



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