ウィリアムズ症候群領域7q11.23に共通して存在する逆位は臨床兆候の原因ではない



The common inversion of the Williams-Beuren syndrome region at 7q11.23 does not cause clinical symptoms.

Tam E, Young EJ, Morris CA, Marshall CR, Loo W, Scherer SW,Mervis CB,Osborne LR.
Department of Medicine, University of Toronto, Toronto, Ontario, Canada.
Am J Med Genet A. 2008 Jul 15;146A(14):1797-806.

ウィリアムズ症候群は7q11.23部位における1.5M塩基対の欠失を原因とする。この領域に共通して存在する逆位(WBSinv-1)は、遺伝子多型として存在する以外に、ウィリアムズ症候群に似た特徴は有しているが欠失のない人にもみられることから、臨床兆候の原因になっている可能性がある。今回我々は、臨床兆候とWBSinv-1を有しているが、7q11.23部位の欠失はないと報告されている患者に対して、包括的な臨床、発達、遺伝子の各検査を行った。同時にWBSinv-1を有している一般の人々に対して7q11.23領域にある遺伝子の発現を調査した。臨床兆候とWBSinv-1を有している人は、ウィリアムズ症候群患者とは臨床的にも心理的にも顕著に重なる部分はないことを示した。さらに、臨床兆候とWBSinv-1を有している人の中に、22q11.2部位にある口蓋心臓顔面症候群領域の一部が1.3Mb程度重複している人がひとり見つかった。WBSinv-1を有している人はウィリアムズ症候群領域の遺伝子が正常に発現していることも示した。この結果から、WBSinv-1は臨床兆候の原因ではないことがわかり、希少症候群における非典型的な症状を有する人への診断には注意が必用であることを注意喚起する。全ゲノム分析を行うことで、これまでに発見されていないコピー数の変異が症候群的兆候の要因となっていることを明らかにする可能性がある。

(2008年7月)



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