共通サブユニットであるウィリアムズ症候群転写因子(WSTF)を共有する2種類のクロマチンリモデリング複合体の特徴的な機能



Distinct function of 2 chromatin remodeling complexes that share a common subunit, Williams syndrome transcription factor (WSTF).

吉村 公宏, 北川 浩史, 藤木 亮次, Tanabe M, Takezawa S, Takada I, Yamaoka I, Yonezawa M, Kondo T, 古谷 喜幸, 八木 寿人, Yoshinaga S, Masuda T, Fukuda T, Yamamoto Y, Ebihara K, Li DY, 松岡 瑠美子, Takeuchi JK, 松本 高広, 加藤 茂明.
Institute of Molecular and Cellular Biosciences, The University of Tokyo, Yayoi 1-1-1, Bunkyo-ku, Tokyo 113-0032, Japan;
Proc Natl Acad Sci U S A. 2009 May 26. [Epub ahead of print]

多くの核複合体がクロマチン構造を修飾して機能ユニットとして作動する。しかし、複合体に含まれる各コンポーネントの生体内における役割は解っていない。ATP依存いくつかのタイプのタンパク質複合体に含まれるクロマチンリモデリング複合体はヒストン修飾因子と協同してクロマチン構造を再編成する。ウィリアムズ症候群転写因子(WSTF)は、SWI/SNFタイプの複合体であるWINACと、ISWIタイプの複合体であるWICHという異なる2種類の複合体とともに、主要なサブユニットとして生化学的に同定された。ここで、WSTF(-/-)マウスを製作し、生体内におけるクロマチンリモデリング機能の調査を行った。WSTFが発現しないことは新生仔時点で致命的であり、すべてのWSTF(-/-)マウス新生仔とWSTF(+/-)マウス新生仔のおよそ10%に循環器系異常がみられた。これは常染色体優勢遺伝形質を示すウィリアムズ症候群患者と同様である。WSTF(-/-)胚の発生分析を行った結果、Gja5遺伝子の発現制御がE9.5とは異なっており、循環器系転写因子の動員に必須となるプロモーター領域の周囲におけるクロマチンリの再構成が正しく行われないことが原因だと推測される。WSTF(-/-)マウスの胚性線維芽細胞(MEF)の生体外における分析によっても、Gja5プロモーターに対する循環器系転写活性化因子のトランス活性化機能異常が判明したが、その効果はWINACコンポーネントの過剰発現によって逆転する。WSTF(-/-) MEF細胞と同様、ISWI-ATP分解酵素であるSnf2hをPCNAへ動員すること、およびDNAが損傷を受けた後の細胞の生存の両面において障害があるが、WICHコンポーネントの過剰発現で回復する。このように、本研究はWSTFが共有されていること、 および、WICHコンポーネントはDNAの修復に、WINACコンポーネントは転写因子制御にそれぞれ不可欠なサブユニットであることの証拠を提供する。

(2009年5月)

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論文不正のためProceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America誌に投稿された本論文は2014年2年11日に撤回されています。詳細は東京大学の「分子細胞生物学研究所・旧加藤研究室における論文不正に関する調査報告(最終)」(2014年12月26日付)を参照してください。

(2015年1月)



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