染色体異常、先天異常-29 Williams症候群



大木寛生 (東京都清瀬小児病院 循環器科)
小児内科:Vol.41, 増刊号, Page304-308 (2009.08.30)

Williams症候群(WS)はelastin血管病変、妖精様特異顔貌、結合組織異常、精神発達遅滞、視空間認知障害、過剰友好性、成長障害、高Ca血症などを特徴とする。診断基準を満たすWSの99%以上に7番染色体長腕11.23部位のelastin遺伝子(ELN)を含む隣接遺伝子群(WBSCR)の半接合体欠失を認める。基本病態はWBSCR前後に3個(centromeric、medial、telomeric)のlow copy repeats(LCRs)が存在し、各々3個(A、B、C)のblocksからなる。減数分裂時の不均衡相同組み換え(NAHR)により欠失が生じやすい。WBSCR欠失由来の親の約1/3にcentromeric/telomeric LCRsが関与するWBSCR逆位を認める。WBSCR半接合体欠失をFISH(fluorescence in situ hybridization)法で検出できる。発達遅滞、低身長、特異顔貌、先天性心疾患を合併する他の症候群(Noonan症候群、22q11.2欠失症候群、Smith-Magenis症候群、Kabuki make-up症候群、胎児アルコール症候群など)との鑑別を要する。

(2009年10月、新規)

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1.基本病因、発症機序

 Williams症候群(WS)(Williams-Beuren症候群:WBS)はelastin血管病変、妖精様特異顔貌、結合組織異常、精神発達遅滞、視空間認知障害、過剰友好性、成長障害、高Ca血症などを特徴とし、診断基準を満たすWSの90%以上に7番染色体長腕11.23部位のelastin遺伝子(ELN)を含む隣接遺伝子群(Williams-Beuren syndrome critical region:WBSCR)の半接合欠失を認める。頻度は出生7,500〜20,000人に1人で性差はない。

2.基本病態

 WSBCR前後に3個(centromeric、medial、telomeric)のlow copy repeats(LCRs)が存在し、各々3個(A、B、C)のblocksからなる。減数分裂時の不均衡相同組み換え(NAHR)により欠失が生じやすい。WBSCR欠失由来の親の約1/3にcentromeric/telomeric LCRsが関与するWBSCR逆位を認める。罹患者の95%にcentromeric/medial Block B(逆位ではtelomeric medial Block B)が関与する1.55Mb、5%にcentromeric/medial Block Aが関与する1.84Mbの欠失を認める。WBSCRには26から28個の遺伝子が含まれ、欠失断端によりNCF1、GTF2IRD2が欠失に含まれるかどうかが異なる。

(途中略)

5.治療目的とその手順

 早期介入、特別教育プログラム、職業訓練により発達促進が期待できるが社会的自立(16%)は困難である。50%で不安神経症、注意欠陥症に対する薬物療法を要する。Elastin血管病変は年齢と共に進行するため長期モニタリングが必要である。30%にSVAS(圧較差50mmHg以上)に対する手術が必要である。僧帽弁閉鎖不全や腎動脈狭窄に対して手術を要することもある。Coanda効果で右上肢高血圧になる可能性があるため血圧測定は両上肢で行うべきである。高血圧に対する薬物療法も必要になる。高Ca血症は不機嫌、嘔吐、便秘、筋攣縮などの原因となるため定期的に血中、尿中Caを測定し、必要に応じてCaやビタミンDの摂取量調整を行う。小児期のビタミンDを含んだ複合ビタミン剤補充は避けるべきである。糖質コルチコイド、pamidronate投与を要することもある。歯科、眼科、耳鼻科、整形外科への定期的なコンサルトも必要である。

(以下略)

(2009年10月、追加)



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