多機能転写因子TFII-IはBRCA1機能に対する活性化因子である
Multifunctional transcription factor TFII-I is an activator of BRCA1 function.
Tanikawa M, Wada-Hiraike O, 中川 俊介, Shirane A, Hiraike H, Koyama S, Miyamoto Y, Sone K, Tsuruga T, Nagasaka K, 松本 陽子, Ikeda Y, Shoji K, 織田 克利, Fukuhara H, Nakagawa K, 加藤 茂明, 矢野 哲, 武谷 雄二.
Department of Obstetrics and Gynecology, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo, 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo 113-8655, Japan.
Br J Cancer. 2011 Mar 15. [Epub ahead of print]
背景:
TFII-Iは多機能転写因子であり、いくつかのDNA配列エレメントに特異的に結合して成長因子シグナルの媒介を行う。TFII-Iおよび関連する転写機能をコードする染色体7q11.23領域の微小欠失はウィリアムズ症候群の発症につながる。ウィリアムズ症候群は常染色体優性遺伝病であり、特徴的な認知プロフィール、糖尿病、高血圧、不安症、頭蓋顔面欠陥などを特徴とする。遺伝性の乳がんおよび卵巣がんの感受性遺伝子産物であるBRCA1は正のSIRT1のプロモータ領域に結合することによってSIRT1発現に対する正の制御因子として働くが、BRCA1とTFII-I間の掛け合い応答は今日まで研究されていない。
手法:
BRCA1とTFII-I間の物理的相互作用を探索した。FTII-Iの病態生理学的機能を特定するため、BRCA1に対する転写因子としての役割を調査した。
結果:
我々はTFII-Iのカルボキシル末端とBRCTドメインとしても知られているBRCA1のカルボキシル末端の間に物理的相互作用があることを発見した。内在性のTFII-IとBRCA1は生体細胞内では核内で複合体を形成しており、放射線照射核増殖巣(irradiation-induced nuclear foci)の形成が観察された。さらに我々は一過性発現アッセイ法を使うことで、TFII-Iの発現がBRCTの転写活性機能を刺激することを示した。TFII-Iの発現はBRCA1の全長によって媒介されるSIRT1プロモータの転写活性化も亢進する。
結論:
これらの結果から、TFII-IはBRCA1の細胞機能を調節するという固有機能が明らかになり、乳がんの発生を理解するための重要な暗示を提供する。
(2011年4月)
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