人工ヒト多能性幹細胞による大動脈弁上狭窄症候群のモデル
Modeling Supravalvular Aortic Stenosis Syndrome Using Human Induced Pluripotent Stem Cells.
Ge X, Ren Y, Bartulos O, Lee MY, Yue Z, Kim KY, Li W, Amos PJ, Bozkulak EC, Iyer A, Zheng W, Zhao H, Martin KA, Kotton DN, Tellides G, Park IH, Yue L, Qyang Y.
1 Yale University School of Medicine, New Haven, CT;
Circulation. 2012 Aug 22. [Epub ahead of print]
背景:
大動脈弁上狭窄症はエラスチン遺伝子の突然変異によって引き起こされ、平滑筋細胞の異常増殖が上行大動脈や他の動脈欠陥の狭窄や封鎖につながっている。患者特異的な平滑筋細胞を利用すれば疾患のメカニズム研究と新たな治療介入方法の開発を促進できる。
手法と結果:
本稿では、大動脈弁上狭窄症患者から採取した未成熟な人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell:iPSC)系列の発達が、エラスチン遺伝子の第9エクソン4個のヌクレオチドが挿入されたことにより第10エクソンが成熟前に中途終始してしまうことを報告する。我々は大動脈弁上狭窄にある人工多能性幹細胞から導出された平滑筋細胞は、正常な対照群に比べて、収縮した成熟平滑筋の特徴である、平滑筋αアクチンフィラメントの結束の構造化されたネットワークが有意に少ないことを示した。エラスチン組み換えタンパク質の付加や小さなGTP結合タンパク質RhoAシグナルの亢進によって、大動脈弁上狭窄症の人工多能性幹細胞から導出された平滑筋細胞の平滑筋αアクチンフィラメントの結束の構築を助けることができる。細胞の数やDNA前駆物質(ブロモデオキシウリジン)の分析から、対照群に比べて大動脈弁上狭窄症の人工多能性幹細胞から導出された平滑筋細胞の増殖率は有意に高いことが明らかになった。さらに、大動脈弁上狭窄症の人工多能性幹細胞から導出された平滑筋細胞は対照群に比べて、走化性エージェントの血小板由来増殖因子(chemotactic agent platelet-derived growth factor (PDGF))の遊走率が有意に高いことが明らかになった。対照群に比べて細胞外シグナル制御キナーゼ1/2(ERK1/2)の活動の亢進が人工多能性幹細胞から導出された平滑筋細胞の過剰な増殖に必要であることの証拠を提示する。この表現型はウィリアムズ症候群によってエラスチン遺伝子が欠失した患者から作成された人工多能性幹細胞から導出された平滑筋細胞で確認された。
結論:
このように、大動脈弁上狭窄症における人工多能性幹細胞から導出された平滑筋細胞は大動脈弁上狭窄症患者の中心となる病理学的特を再現し、疾患メカニズムや新たな治療法の研究につながる有望な戦略を提供する可能性がある。
(2012年8月)
目次に戻る