ウイリアムス症候群:認知能力を支配する遺伝子の探索



Williams syndrome : the search for genetic origins of cognition

J. R.Korenberg,(1), X-N.Chen(1), Z.Lai(2), D.Yimlamai,(1), R.Bisighini(2), U.Bellugi(2)
(1) :Medical Genetics, Cedars-Sinai Medical Center, UCLA, Los Angeles, CA
(2) :Laboratory for Cognitive Neuroscience, The Salk Institute for Biological Studies, La Jolla, CA.
アメリカ人類遺伝学会 1997年 年次総会 抄録 No.579

認知能力を支配する遺伝子の探索において、ウイリアムス症候群は注目すべきモデルと なっている。欠失の大きさ・対立遺伝子・位置・遺伝子の両親からの由来・遺伝形質の抑制 等が、認知能力に影響を与えている可能性が予想されている。ウイリアムス症候群の認知面 の表現型をさらに理解するために、ウイリアムス症候群の被験者に対して、欠失の分子構造 分析・両親からの由来・認知面の表現型を調査した。多面的訓練に関する研究の対象者の中 から、目的にかなった40人の被験者が選択された。被験者は神経心理学的理解度テストを 受けた。ウイリアムス症候群の欠失領域の分子構造と両親からの由来が分析された。分析に は、多型マーカー分析(D7S653,D7S675フランキング、ELN17,D7S1870欠失)と、エラスチ ンとWSCR5とD7S1870遺伝子領域を含むバクテリア合成染色体(bacterial artificial chromosomes:BACs)を使ったFISH法が用いられた。

研究の結果、40人の被験者に関して、ELNからD7S1870に至る領域の欠失が共通してい た。この共通欠失領域は、フランキングマーカの存在を示す多型分析によっても示された。 両親からの由来を解析できた17例の内、母親由来が13例、父親由来が4例であった。言語 や空間認識や顔の判別などの能力調査が実施された。個人個人の成績と、これまで調査して きたウイリアムス症候群の母集団との相関を示すZスコアが求められた。今回のサンプルの Zスコアの範囲は +3.76から -3.91であり、ばらつきが大きいことを示している。しかし、 大きく範囲を超え(1.5以上低い、もしくは高いと定義)ている母親由来の12例は、すべ て正方向にあった。結論として、欠失領域の大きさではウイリアムス症候群における認知能 力のばらつきを説明できないが、この手がかりは最終的に両親の由来のなかに見つけられる かもしれないということが判明した。

(1998年3月)

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