ウィリアムズ症候群における自閉症・高セロトニン血症・重度発話言語障害の出現
Presence of autism, hyperserotonemia, and severe expressive language impairment in Williams-Beuren syndrome.
Tordjman S, Anderson GM, Cohen D, Kermarrec S, Carlier M, Touitou Y, Saugier-Veber P, Lagneaux C, Chevreuil C, Verloes A.
Department of Child and Adolescent Psychiatry, Centre Hospitalier Guillaume Regnier and Medical School of the University of Rennes 1, Rennes 35000, France. s.tordjman@yahoo.fr.
Mol Autism. 2013 Aug 23;4(1):29. doi: 10.1186/2040-2392-4-29.
背景:
7q11.23領域にあるウィリアムズ症候群責任領域の欠失は、超社会性や過度の多弁など自閉症の行動面の表現型とは正反対と考えられる特徴を共通的に有する発達疾患の原因となる。ウィリアムズ症候群責任領域の重複は発話言語障害の重度の遅れにつながる。7q11.23領域の遺伝子量が言語発達に影響を与えるという仮説が唱えられている。
方法:
体系的臨床遺伝検査においてウィリアムズ症候群にみられる典型的な顔貌異形症を呈し、自閉症の遺伝検査に参加した2名の重度自閉症の患者に対して、FISH法と高解像度一塩基多型アレイ分析を用いてウィリアムズ症候群責任領域の分子特徴分析を行った。遺伝子型はセロトニン輸送体プロモーター多型(SLC6A4遺伝子座にある5-HTTLPR)であった。血小板セロトニンレベルと尿中のメラトニン代謝産物(6-sulfatoxymelatonin)排泄量を測定した。行動と認知表現型を調査した。
結果:
2人の患者は近位と内部にある低反復クラスターの間にある共通的なウィリアムズ症候群責任領域の欠失を有しており、自閉症の診断基準に適合していて、発話言語がまったくないことを含めて重度のコミュニケーション障害を示していた。両患者とも5-HTTLPRはSS型遺伝子型を保有し、血小板高セロトニン血症とメラトニン低生成を示した。
結論:
この観察結果によれば、典型的な自閉症に合併する行動的および神経化学的な表現型が共通的なウィリアムズ症候群責任領域の欠失を有する患者にも発生したことを示している。この結果はウィリアムズ症候群の表現型異質性、および7q11.23領域に存在し、その量の変化が社会的コミュニケーション技能の発達に影響を与えている特定の遺伝子との間で相互作用を有する遺伝および環境要因に関する興味深い疑問を浮かび上がらせる。このように、ウィリアムズ症候群責任領域に存在する遺伝子が社会的コミュニケーション表現に与える影響は、自閉症の社会的コミュニケーション障害の重度に影響を与えることで知られている5-HTTLPR等の他の遺伝子や、自閉症を合併するウィリアムズ症候群患者にはみられるが、自閉症を合併しないウィリアムズ症候群患者ではみられない高セロトニン血症などの環境要因によって劇的に変化する。このことから、ウィリアムズ症候群は、遺伝子型/表現型の相関、さらには遺伝子/環境の相互作用や遺伝子の背景的効果などを研究するために遺伝子/認知/行動/神経化学を統合するアプローチを発達させるための可能性を秘めた有意義なモデルを提供してくれる。この結果は、自閉症と診断された患者に対して注意深く臨床的および分子遺伝学的検査を行うことを考慮することの重要性を強調している。
(2013年9月)
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