ウィリアムズ症候群と自閉症に関与する遺伝子:社会性行動の発達の研究へのエントリーポイントとして



櫻井 武
京都大学大学院医学研究科メディカルイノベーションセンター
日本生物学的精神医学会誌 23号4巻(2012年) 273-279ページ

社会性行動は我々の社会生活において必須の行動であり、その異常は様々な精神疾患にみられる表現型である。染色体領域7q11.23の欠損は過剰な社会性行動を示すWilliams-Beuren症候群(WBS)を、またその重複は社会性行動に異常を示す自閉症スペクトラムを引き起こすことが知られている。したがって、この領域には社会性行動の獲得に必要な脳回路の形成や機能に関わる遺伝子が存在すると考えられる。非定型欠損を持つWBSの患者の表現型-遺伝子型の相関関係から社会性行動の異常に関わる遺伝子が絞られてきており、転写調節因子Gtf2iはその有力な候補である。我々はGtf2iへテロ接合マウスがWBSで見られる様な社会性行動の増加を示すことを見出している。今後、Gtf2iヘテロ接合マウスやGtf2i遺伝子を1コピー余分に持つBACトランスジェニックの行動解析や分子レベルでの解析を行うことによって、社会性行動に関わる脳の神経回路の形成と機能のメカニズムおよびその異常のメカニズムの理解を進めたい。

(2013年9月)



目次に戻る