ウイリアムス症候群の欠失領域 7q11.23 の切断位置に存在する複製遺伝子は、BTKの燐酸化対象であるイニシエータ結合蛋白質 TFII-I と BAP-135 をコードしている



A duplicated gene in the breakpoint regions of the 7q11.23 Williams-Beuren syndrome deletion encodes the initiator binding protein TFII-I and BAP-135, a phosphorylation target of BTK.

Perez Jurado LA, Wang YK, Peoples R, Coloma A, Cruces J, Francke U
Unidad de Gen-etica, Hospital Ni-no Jes-us, Madred, Spain.
Stanford University Medical Center,
Hum Mol Genet 1998 Mar;7(3):325-334

ウイリアムス症候群は多臓器で異常の発現を伴う神経発生的障害である。7q11.23の位置に ある染色体バンドの部分的欠失による異形接合が原因である。この領域の切断位置は、エ ラスチン遺伝子(ELN)座の両側それぞれおよそ1cM(センチモーガン)のところにある。 共通的な切断位置の近傍にある複製領域についての特徴を、転写遺伝子を含めて明らかに した。中央側(動原体側)と端部側のコピーに関しては、3’側領域はほとんど同一である が5’側では変化が見られる。中央側に由来するの4.3kbのメッセンジャーRNAと端部側に 由来するの5.4kbのメッセンジャーRNAが、胎児や成人のいろいろな器官で発現している。 端部側の遺伝子は何種類かのスプライシング型を持っているが、エラスチン遺伝子が欠失 していると報告されているウイリアムス症候群の患者全員で、この遺伝子の欠失が見られ た。データベースを検索した結果、この遺伝子は、B細胞にあるブルトンのチロシン燐酸 化酵素によって燐酸化された、BAP-135と呼ばれる蛋白質をコードしていることが判明した。 同時に、多機能転写制御因子 TFII-Iでもあることも明らかにされ、GTF2Iという名前の遺 伝子であることが判った。中央側に存在する遺伝子はウイリアムス症候群の患者では欠失 してはいないが、部分的に短縮された疑似遺伝子(遺伝子名はGTF2IP1)で、蛋白質を合成 しないことが判明した。両遺伝子座は、それぞれ異なった遺伝子コンティグ(重複連続し たクローン化DNAの集合体)に位置しており、これらのコンティグには他の遺伝子(欠失 したものも、していないものも含まれる)座も含んでいる。共通領域向けのプローブから、 ウイリアムス症候群につながる欠失を持った患者に特有の、I結合(I junction)ではな い3Mb以上の大きさの断片が認められた。これらの結果から、GTF2I と GTF2IP1 を含ん だ複製領域は、欠失の切断位置の近くに位置し、減数分裂時の相同7番染色体間の不等組 み替えや、染色体内部での転移の原因になっている可能性がある。同時に、GTF2I の半接 合はウイリアムス症候群の表現型に寄与しているかもしれない。

(1998年5月)

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