ウィリアムズ症候群における視空間認知に対する遺伝子の貢献:2種類の対照的な部分的欠失を有する患者から得られた洞察
Genetic contributions to visuospatial cognition in Williams syndrome: insights from two contrasting partial deletion patients.
Broadbent H(1), Farran EK(1), Chin E(2), Metcalfe K(3), Tassabehji M(3), Turnpenny P(4), Sansbury F(4), Meaburn E(2), Karmiloff-Smith A(2).
Author information:
(1)Institute of Education, University of London, London, UK.
(2)Birkbeck Centre for Brain and Cognitive Development, University of London, London, UK.
(3)Genetic Medicine, St. Mary's Hospital, Manchester, UK.
(4)Royal Devon and Exeter Foundation Trust, Exeter, UK ; Penninsula College of Medicine and Dentistry, Universities of Exeter and Plymouth, Exeter, UK.
J Neurodev Disord. 2014;6(1):18. doi: 10.1186/1866-1955-6-18. Epub 2014 Jul 15.
背景:
ウィリアムズ症候群は稀少神経発達疾患であり、7番染色体の遺伝子座7q11.23領域からおよそ27個の遺伝子が欠失することによって引き起こされる。ウィリアムズ症候群は、視空間認知課題には重度の欠陥がある一方で、言語や顔認知などその他の認知領域では比較的熟達した成績を示すなど不均等な認知プロフィールを特徴とする。ウィリアムズ症候群責任領域(WS critical region (WSCR))内の部分的遺伝子欠失を有する患者は特定の遺伝子がこれらの複雑な表現型に貢献することに関する洞察を与えてくれる。しかし、異なる遺伝子の組み合わせによる影響は理解されないままである。
手法:
ウィリアムズ症候群責任領域における対照的な部分欠失を有する2人の患者の視空間認知に関して報告する。一人は女性でHRと呼ばれ、年齢は11歳9か月で、(GTF2IRD1まで)のウィリアムズ症候群遺伝子24個のハプロ不全を有している。もう一人のJBは男性で年齢は14歳2か月、ウィリアムズ症候群責任領域のもっともテロメア側の3個の遺伝子が欠失しているという部分欠失である。
結果:
我々が実施した机上の心理測定、小規模及び大規模な実験課題などにより得られた視空間領域の詳細な表現型分析により、HRのプロフィールは一部に異形の特徴がみられるものの典型的な発達を示す対照群と一致していた。このデータは、視空間領域全般にわたるJBの長所と短所の異形なプロフィールとは対照的であるとともに、ウィリアムズ症候群に関連するすべての遺伝子が欠失している患者の実質的な視空間障害とも異なっている。
結論:
我々の発見は特定の遺伝子がウィリアムズ症候群における空間的処理障害に貢献していること、さらに空間認知の多面的な本質や、ウィリアムズ症候群責任領域内にある遺伝子の欠失が視空間認知能力の異なる要素に対して多岐に渡って与える効果を指摘している。ウィリアムズ症候群責任領域のテロメア側に存在する基本転写因子の重要性、およびそれの組み合わせがウィリアムズ症候群の視空間表現型に与える効果などについても議論する。
(2014年7月)
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