Wntシグナル経路における腫瘍抑制因子BCL7Bの機能



The Tumor Suppressor BCL7B Functions in the Wnt Signaling Pathway.

上原 朋子(1), Kage-Nakadai E(1), Yoshina S(1), Imae R(1), 三谷 昌平(2).
Author information:
(1) 東京女子医科大学大学院機能学系専攻生理学(第二)分野
(2)Department of Physiology, Tokyo Women's Medical University School of Medicine, Tokyo, Japan; Tokyo Women's Medical University Institute for Integrated Medical Sciences, Tokyo, Japan.
PLoS Genet. 2015 Jan 8;11(1):e1004921. doi: 10.1371/journal.pgen.1004921. eCollection 2015.

ヒトBCL7遺伝子ファミリーはBCL7AとBCL7BとBCL7Cで構成される。様々な臨床研究によれば BCL7遺伝子ファミリーは癌の発生・進行・発展に関係している。ファミリーの内、染色体7q11.23に位置するBCL7Bはウィリアムズ症候群の患者で欠失している遺伝子の一つである。いくつかの研究によれば、ウィリアムズ症候群の患者に発生する悪性の疾患はBCL7Bの異常によって引き起こされると報告されているが、細胞レベルにおけるこの遺伝子の機能はほとんど理解されていない。本研究では、エレガンス線虫におけるヒトのBCL7B遺伝子ファミリーの唯一の相同体であるbcl-7遺伝子に焦点を当て、bcl-7欠失突然変異体の分析を行った。結果として、bcl-7は幹細胞としての自己更新機能を持ちWNT経路を通して非対称に分裂する上皮性縫合細胞の非対称分化に不可欠であることが判明した。エレガンス線虫においてWNT経路によって調節される遠位端細胞発展は、bcl-7ノックアウト突然変異体においても影響を受けている。興味深いことに、bcl-7突然変異体は核の拡張や悪性細胞の未分化機能を連想させる。さらに、ヒト胃癌細胞 (KATOIII)内においては、BCL7Bノックダウンが核の拡張を誘起し、多核化表現型を促進し、細胞死を抑制する。加えて、本研究によれば、BCL7BはWntシグナル経路を負の方向に調節し、アポトーシス経路を正の方向に調節する。我々のデータを総合的に考えると、BCL7B/BCL-7は核の構造を維持することに何らかの役割をはたし、Wntやアポトーシスなどを含む複数の経路の調節に関わっていることを示す。本研究はウィリアムズ症候群のようなBCL7B欠損症における悪性疾患のリスクを示唆している。

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上記論文の原文が東京女子医科大学のホームページに掲載されています。

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(2015年1月)



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