思春期に初めて診断されたWilliams症候群男児と家族への遺伝カウンセリング経験
中島美佳1)、太田亨2)
1) 社会福祉法人函館厚生院函館中央病院小児科
2) 北海道医療大学個体差医療研究センター
日本遺伝カウンセリング学会誌 Vol.38 No.2 2017年5月 122ページ
【はじめに】
Williams症候群は胎児発育遅延を指摘され、出生時にsmall for gestational ageを認め、多くは出生後の発育遅延や運動発達遅滞、先天性心疾患の合併のため小児科にて総合的に経過観察を受け比較的低年齢で診断されていることが多い先天性奇形症候群の一つである。今回、身体発育・心合併症・精神運動発達についてそれぞれ別の施設で経過観察を受け、思春期に初めて遺伝外来を紹介受診、Williams症候群の診断に至った男児と家族の遺伝カウンセリングを経験したので報告する。
【症例】
初診時14歳5ヶ月の男児。市内の療育・自立支援センターからの紹介受診。@自閉症スペクトラム障害、A軽度知的障害、B両側橈尺骨近位端癒合症が主訴であった。(既往歴)市内の産科クリニックで42周0日、2560gで出生。自宅退院し近医小児科医院の1ヶ月健診で体重増加不良を指摘された。その後の経過も同医院で行い身体発達は緩徐で、運動発達の遅れも指摘された。3〜4ヶ月で定頚したが、始歩は2歳3ヶ月であった。心雑音のために小児心臓外来へ通院、就学前にはフォロー終了した。小学校普通学級に就学し、3年生ころから勉強についていけなくなり中学から支援学級に通った。(現在)書字や模写が苦手で、空間認知に特徴があった。始語は2歳とやや遅れたが、話し始めるととてもおしゃべりであるということだった。
【カウンセリング】
初回では、主訴、特徴的な顔貌、空間認知の特徴などから本症を含めた先天性疾患の可能性を説明、2回目の遺伝外来で同意を得て染色体FISH検査を提出した。診断確定した3回目の外来において、本症候群について詳細な説明や今後の健康管理についてカウンセリングを行った。
【考案】
家族は診断に驚くとともに安堵していた。これまで療育や健診での診断にどこかしっくりこない感じを持っていたという。児の成長とともに不安も抱いていた家族にとって必要な情報を提供できたことは有意義であった。
(2018年2月)
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