皮膚やエラスチン欠乏細胞内に導入された外来性合成改造mRNAによる新規のエラスチン生成
De Novo Synthesis of Elastin by Exogenous Delivery of Synthetic Modified mRNA into Skin and Elastin-Deficient Cells.
Lescan M(1), Perl RM(1), Golombek S(1), Pilz M(1), Hann L(1), Yasmin M(1), Behring A(1), Keller T(1), Nolte A(1), Gruhn F(1), Kochba E(2), Levin Y(2), Schlensak C(1), Wendel HP(1), Avci-Adali M(3).
Author information:
(1)Department of Thoracic and Cardiovascular Surgery, University Hospital Tubingen, Calwerstrase 7/1, 72076 Tubingen, Germany.
(2)NanoPass Technologies, Ltd., 3 Golda Meir, 7403648 Nes Ziona, Israel.
(3)Department of Thoracic and Cardiovascular Surgery, University Hospital Tubingen, Calwerstrase 7/1, 72076 Tubingen, Germany. Electronic address: meltem.avci-adali@uni-tuebingen.de.
Mol Ther Nucleic Acids. 2018 Jun 1;11:475-484. doi: 10.1016/j.omtn.2018.03.013. Epub 2018 Mar 30.
エラスチンは重要でかつ多量に存在する細胞外基質たんぱく質であり、動脈壁、靱帯、皮膚、肺などの組織や臓器に弾性や弾力性を与えている。 エラスチン合成量が減少するウィリアムズ症候群などの遺伝性疾患に加えて、外傷、加齢、後天性疾患などが現存するエラスチン繊維の分解につながる。このように、影響を受けた臓器の弾力性を回復させなければいけないいくつかの医学的症状においては新たなエラスチンの合成が必要となる。そこで、我々はエラスチンを新規に合成することを目的としてトロポエラスチンをコードする合成改造mRNAを利用し、細胞内や豚の皮膚を用いた生体外におけるmRNAが媒介したエラスチン合成を測定した。ウィリアムズ症候群患者から分離されたヒト血管内皮細胞株(EA.hy926)細胞、ヒトの繊維芽細胞、間葉系幹細胞に2.5μgのトロポエラスチンmRNAを遺伝子導入した。24時間後、Fastin assay(エラスチンの比色定量キット)とドットブロット分析法を用いてエラスチンの生成を分析した。処理していない細胞と比較して、トロポエラスチンmRNAを導入した細胞においてはエラスチンの量が有意に増加していることが判明した。導入した合成トロポエラスチンmRNAは、エラスチン欠乏型間葉系幹細胞においてもエラスチンの生成量を有意に増加させることができた。豚の皮膚においても、マイクロインジェクション法を用いて合成mRNAを真皮内に注入した後、エラスチンの量が約20%増加していることが検出された。本研究ではエラスチン欠乏細胞や皮膚においてトロポエラスチンをコードする合成mRNAがエラスチンの生成に適用できることを示した。つまり、このようなmRNAを基盤とした遺伝子組込が不要な手法は、皮膚や血管や肺胞などの内部において新規にエラスチンを生成するための再生医療の分野で大きな可能性を秘めていて、希望が持てる。
(2018年6月)
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