ヒトのウィリアムズ症候群において機能を有する遺伝子の活動は、灰色オオカミのゲノムにみられる移動エレメントの挿入によって影響をうけている



Activity of genes with functions in human Williams-Beuren Syndrome are impacted by mobile element insertions in the gray wolf genome.

vonHoldt BM(1), Ji SS(2), Aardema ML(3)(4), Stahler D(5), Udell MAR(6), Sinsheimer JS(2)(7).
Author information:
(1)Department of Ecology & Evolutionary Biology, Princeton University, Princeton,NJ.
(2)Departments of Biostatistics,UCLA Fielding School of Public Health,Los Angeles,CA.
(3)Department of Biology, Montclair State University, Montclair, NJ.
(4)Sackler Institute for Comparative Genomics, American Museum of Natural History, New York, NY.
(5)Yellowstone Center for Resources, National Park Service, Yellowstone National Park, WY.
(6)Department of Animal & Rangeland Sciences, Oregon State University, Corvallis,OR.
(7)Departments of Human Genetics and Biomathematics, David Geffen School of Medicine at UCLA, Los Angeles, CA.
Genome Biol Evol. 2018 Jun 1. doi: 10.1093/gbe/evy112. [Epub ahead of print]

イヌ類においては、トランスポゾンの動態が超社会的行動症候群に関連しているが、その機能的メカニズムは未だに明らかにされていない。我々は、イヌやイエローストーンオオカミにおける、これらの行動に関連する移動要素の挿入の後成的(エピジェネティックな)あるいは転写の結果を研究した。我々の仮説は、トランスポゾンそれ自体が原因となる機能を有しているのではなく、それらの転写制御が機能的影響を与えている可能性がある。超社会性に関連する4種類のアウトライアーなトランスポゾンを調査して、それらが後成的な発現抑制を標的としている結果を期待した。挿入された移動エレメントの過剰メチル化、すなわち挿入された移動エレメントそのものではなく、その挿入要素の後成的な発現抑制が近傍の遺伝子の調節不全を引き起こしていることを示唆していると予想した。トランスポゾンから導出された配列が、そのコピー数や種にかかわらず有意に高度なメチル化が行なわれていることを発見した。さらに、トランスクリプトームの配列データを評価した結果、移動要素の挿入が6個の遺伝子(WBSCR17, LIMK1, GTF2I, WBSCR27, BAZ1B, BCL7B)の発現レベルに影響を与えている証拠を得た。これらの遺伝子はコピー数の違い、典型的には半接合を起因として発生するヒトにおけるウィリアムズ症候群の原因となる役割を有していることが知られている。さらに調査をする必要があるが、我々が得た結果は、数か所の挿入が、近位のメチル化を除外するシス調節メカニズムと同じように、複数の遺伝子の局所的発現を変化させていることを示唆している。

訳者注: 「トランスクリプトーム」=mRNAの全体集合を表す造語。

(2018年6月)



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