ウイリアムス症候群に共通する(染色体)領域と、成長・心疾患・人種・両親由来との関の臨床的相関に関する記述



Delineation of the common critical region in Williams syndrome and clinical correlation of growth, heart defects, ethnicity, and parental origin.

Wu YQ, Sutton VR, Nickerson E, Lupski JR, Potocki L, Korenberg JR, Greenberg F,Tassabehji M, Shaffer LG
Department of Molecular and Human Genetics, Baylor College of Medicine, Houston, Texas 77030, USA.
Am J Med Genet 1998 Jun 16;78(1):82-89

ウイリアムス症候群は、さまざまな表現型を示す神経発達疾患である。分子遺伝学的研究 によれば、エラスチン遺伝子座(ELN)の半接合が、ウイリアムス症候群に見られる心疾患の 原因だと考えられている。しかし、精神遅滞や高カルシウム血症は、ELNに隣接する他の遺 伝子が原因だと思われる。本研究では、7番染色体長腕上のELNに隣接する領域に対して、 10種類類のマイクロサテライト・マーカーと5種類のFISHプローブを使って、63人の 患者の最少欠失領域を決定した。ハプロタイプ(遺伝子セット)分析によれば、欠失があ る場合、その大きさは一定であり、サテライト・マーカで定義された共通欠失領域の両端 に対する遺伝子プローブを用いたFISH分析と同じ結果を示す。ELNが欠失している全例に おいて、欠失は D7S489U から D7S1870 の範囲に及ぶ。2つのマーカ間の遺伝子距離は2 cM(センチ・モーガン)である。欠失があった51人の患者のうち、29人は母親由来、 22人は父親由来であった。調査した限りでは、性別・人種・心疾患の有無・欠失の両親 由来が体格に影響を与えているという証拠は発見されなかった。これまでにウイリアムス 症候群に関係すると言われている遺伝子候補の一つである LIMK1に対するヘテロ二重鎖分 析の結果、今回調査したELNの欠失が見られないウイリアムス症候群の患者では、突然変 異は発見されなかった。ウイリアムス症候群を持ちエラスチン遺伝子が欠失しているすべ ての患者で、LIMK1の欠失が見られた。エラスチン遺伝子の欠失があり、大動脈弁上狭窄の 個発例の患者一例だけは、LIMK1の欠失はなかった。LIMK1遺伝子の片方の欠失がウイリア ムス症候群の表現型の一部分を担っているのか、あるいは単にエラスチン遺伝子座に近接 していたので欠失しているだけなのかについては、今後の調査しなければ不明である。

(1998年7月)



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