ウィリアムズ症候群の半接合欠失とLIMK1の変異の両方が背側皮質視覚路機能の結合性に影響を与えている
Williams syndrome hemideletion and LIMK1 variation both affect dorsal stream functional connectivity.
Gregory MD(1), Mervis CB(2), Elliott ML(1), Kippenhan JS(1), Nash T(1), B Czarapata J(1), Prabhakaran R(1), Roe K(1), Eisenberg DP(1), Kohn PD(1), Berman KF(1)(3).
Author information:
(1)Section on Integrative Neuroimaging, Clinical and Translational Neuroscience Branch, National Institute of Mental Health, Intramural Research Program, National Institutes of Health, Bethesda, MD, USA.
(2)Neurodevelopmental Sciences Laboratory, Department of Psychological and Brain Sciences, University of Louisville, KY, USA.
(3)Psychosis and Cognitive Studies Section, Clinical and Translational Neuroscience Branch, National Institute of Mental Health, Intramural Research Program, National Institutes of Health, Bethesda, MD, USA.
Brain. 2019 Nov 5. pii: awz323. doi: 10.1093/brain/awz323. [Epub ahead of print]
ウィリアムズ症候群は稀少遺伝子疾患であり、第7染色体(7q11.23)にある26個の遺伝子に影響する〜1.6Mbの半接合欠失を原因とし、臨床的には認知/行動面の典型的特徴、すなわち顕著な視空間障害、言語的・非言語的両面の推論機能、超社交的性格で判別される。ウィリアムズ症候群で影響を受けている限局的な一連の遺伝子群に関して得られている明確な知見と、充分に定義された神経行動学的表現型と合わせて考えれば、遺伝学的にも臨床的にももっと複雑な状況に適用可能な神経発生学的原理を明らかにできる可能性がある。背側皮質視覚処理経路内にある頭頂間溝は、ウィリアムズ症候群において構造的にも機能的にも変異があることが示されており、 安静時機能的結合やウィリアムズ症候群で半接合欠失している特定の遺伝子群の作用を調査するための対象となる。そこで我々は頭頂間溝の機能的結合における神経の成熟と遊走に重要であり、ウィリアムズ症候群で欠失しているLIMK1遺伝子の作用を調べることにした。まず最初に、対象とした脳の表現型を、LIMK1が半接合欠失しているウィリアムズ症候群患者の頭頂間溝の安静時機能的結合と、定型発達をした子どもとで比較した。次に、母集団から抽出した2つの異なるコホート集団において、ウィリアムズ症候群と類似している頭頂間溝の機能的結合パターンがLIMK1遺伝子配列の変異と関連しているかどうかを調べた。安静時機能的MRIデータ(合計 n=510)を4つの異なるグループ間で比較した。すなわち、(i)20人のウィリアムズ症候群の子どもと、20人の年齢と性別を一致させた定型発達をした子ども、(ii)LIMK1のハプロタイプで層別化した99人の健康な成人からなる探索コホート、(iii)同じくLIMK1のハプロタイプで層別化した39人の健康な成人からなる複製コホート、(iv)LIMK1のハプロタイプで層別化した339人の健康な青年、の4つである。グループ間分析においては、頭頂間溝の安静時機能的結合の差異について、ウィリアムズ症候群の子どもと一致させた定型発達をした子どもとの比較、3種類のコホート母集団個別にその内部でLIMK1ハプロタイプグループ毎の比較を行った。ウィリアムズ症候群を層別化する視空間構成障害と超社交的性格と整合して、ウィリアムズ症候群コホートは、頭頂間溝の視覚処理野と社交性処理の機能的結合において正反対のパターン、前者は回路機能の上昇、後者は回路機能の低下を示した。3つ母集団グループはすべてLIMK1のハプロタイプと相関する差異が紡錘状回に局在的な頭頂間溝の機能的結合で見られた。この部位は視覚処理野でありウィリアムズ症候群-定型発達間の比較でも確認された。これらの結果は、LIMK1がその一部に含まれている神経発達メカニズムが、母集団とウィリアムズ症候群患者の両方の神経回路機能に偏向をかけている可能性があることを示唆している。
(2019年11月)
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