統合的DNAメチル化分析によってウィリアムズ症候群におけるANKRD30B遺伝子の役割候補が明らかになる
Integrated DNA methylation analysis reveals a potential role for ANKRD30B in Williams syndrome.
木村 亮(1), Lardenoije R(2)(3), 富和 清隆(4)(5)(6), 船曳 康子(7)(8), 中田 昌利(9), 鈴木 茂和(9), 粟屋 智就(9), 加藤 寿宏(4)(10), 岡崎 伸(5), 村井 俊哉(8), 平家 俊男(4)(10), Rutten BPF(11), 萩原 正敏(12).
Author information:
(1)京都大学大学院 医学研究科医学専攻 生体構造医学講座形態形成機構学 kimura.ryo.2w@kyoto-u.ac.jp.
(2)Department of Psychiatry and Psychotherapy, University Medical Center G?ttingen, G?ttingen, Germany.
(3)Department of Psychiatry, McLean Hospital, Harvard Medical School,Belmont,MA,USA.
(4)京都大学大学院 医学研究科医学専攻 発生発達医学講座発達小児科学
(5)大阪市立総合医療センター小児神経内科
(6)東大寺福祉療育病院
(7)京都大学大学院 医学研究科医学専攻 高次脳科学講座認知行動脳科学
(8)京都大学大学院 医学研究科医学専攻 脳病態生理学講座精神医学
(9)京都大学大学院 医学研究科医学専攻 生体構造医学講座形態形成機構学
(10)兵庫県立尼崎総合医療センター小児科
(11)Division of Neuroscience, School for Mental Health and Neuroscience (MHeNS), Department of Psychiatry and Neuropsychology, Maastricht University Medical Centre, Maastricht, The Netherlands.
(12) 京都大学大学院 医学研究科医学専攻 生体構造医学講座形態形成機構学, hagiwara.masatoshi.8c@kyoto-u.ac.jp.
Neuropsychopharmacology. 2020 Apr 18. doi: 10.1038/s41386-020-0675-2. [Epub ahead of print]
ウィリアムズ症候群は希少遺伝子疾患であり、染色体7q11.23領域の微小欠失が原因である。ウィリアムズ症候群は、自閉症スペクトラム障害に合併することが多い社会的障害の対極をなす超社会性を含むような幅広い特徴を呈する。ウィリアムズ症候群の表現型のばらつきにはエピジェネティック修飾が含まれる可能性があるが、これらの現象の本質は明らかになっていない。ウィリアムズ症候群の表現型におけるエピジェネティックスの役割をよりよく理解するために、我々はウィリアムズ症候群患者と対照群から得られた血液を検査してDNAのメチル化と遺伝子に発言プロフィールを統合的に分析した。一連の研究成果によれば、全ゲノム領域に渡って380か所のメチル化可変領域(differentially methylated positions (DMPs))が同定された。システムレベルの分析によれば、複数の共メチル化モジュールがウィリアムズ症候群の表現型の仲介に関連しており、もっとも高いスコアを呈するモジュールは神経発生や中枢神経機構の発達に関連していた。特筆すべきこととして、有望なハブ遺伝子の候補であるANKRD30Bは、有意にウィリアムズ症候群患者の血液中で高度にメチル化され、脳器官で下方調節されていた。血中のANKRD30B にあるCpG部位の大部分は脳部位と有意に関連していた。さらに、遺伝子調節ネットワーク分析によってウィリアムズ症候群の主要転写制御因子が得られた。合せて考えると、このシステムレベルのアプローチは、ウィリアムズ症候群におけるエピジェネティックスの役割に焦点を当て、ウィリアムズ症候群患者に診られる複雑な表現型の原因説明を提供してくれる。
訳者注:エピジェネティックス(epigenetics)= DNA配列には変化がないが、メチル化等により細胞分裂を経て伝達される遺伝子機能の変化とそれを扱う学問領域
(2020年4月)
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