てんかん性脳症を合併するα1-γアミノ酪酸A型受容体の差分的複合体



Differential co-assembly of α1-GABA(A)Rs associated with epileptic encephalopathy.

Hannan S(1), Affandi AHB(2), Minere M(2), Jones C(2), Goh P(3), Warnes G(3), Popp B(4)(5), Trollmann R(6), Nizetic D(3)(7), Smart TG(1).
Author information:
(1)Department of Neuroscience, Physiology and Pharmacology, University College London, Gower Street, London WC1E 6BT, UK s.hannan@ucl.ac.uk t.smart@ucl.ac.uk.
(2)Department of Neuroscience, Physiology and Pharmacology, University College London, Gower Street, London WC1E 6BT, UK.
(3)The Blizard Institute, Barts & The London School of Medicine, Queen Mary University of London, 4 Newark Street, London, E1 2AT, UK.
(4)Institute of Human Genetics, University Hospital Erlangen, Friedrich-Alexander-Universit?t Erlangen-N?rnberg (FAU), Schwabachanlage 10, 91054 Erlangen, Germany.
(5)Institute of Human Genetics, University of Leipzig Hospitals and Clinics, Leipzig, Germany.
(6)Department of Pediatrics, Division of Neuropediatrics, Friedrich-Alexander-Universit?t Erlangen-N?rnberg (FAU), Erlangen, Germany.
(7)Lee Kong Chian School of Medicine, Nanyang Technological University, 11 Mandalay Road, 308232 Singapore.
J Neurosci. 2020 Jun 8:JN-RM-2748-19. doi: 10.1523/JNEUROSCI.2748-19.2020. Online ahead of print.

γアミノ酪酸(GABA)A型受容体は神経興奮の制御にとって非常に重要である。この受容体に対する自発的あるいは家系性の置換変異は、神経興奮に関連する疾患や神経発達疾患がアミノ酪酸が媒介する抑制効果の混乱につながるという顕著な影響を表す。重度の癲癇とウィリアムズ症候群を併せ持つ患者の遺伝子型に関する最新分析によれば、γアミノ酪酸A型受容体の主要な遺伝子であるGABRA1に新たなフレームシフト変異が確認された。この変異の結果、α1サブユニットが3番目と4番目の膜貫通ドメインの間で切断され、成熟したタンパク質α1Lys374Serfs*25を構成する24個の新しい残基を導出している。マウスの変異したγアミノ酪酸A型受容体の細胞表面の表現型は野生種に比べて、小胞体内の貯留により重度に障害を受けている。変異した受容体はβ3サブユニットと差分的に同時に発現するが、哺乳類の細胞にあるβ2サブユニットとは発現しない。表面における発現が減少していることは、シナプス後電流が抑制されたて小さくなった結果であり、これはてんかんの誘発の根底にある可能性がある。偏桃体の神経細胞におけるγアミノ酪酸電流密度が影響を受けていないことから、突然変異体である受容体はγアミノ酪酸に対する感受性に制限があるものの、この突然変異は生得な神経細胞におけるγアミノ酪酸A型受容体の発現に対して支配的な負の影響を与えていない。今のところ、根底となるメカニズムは、てんかん発作の変異に特有であり、γアミノ酪酸A型受容体集団、すなわち明らかに受容体の機能や神経抑制に影響を受けている集団における差分的βサブユニットの発現を含んでいる。

有意義な記述

アミノ酪酸A型受容体は神経網の興奮に対する制御に決定的に重要である。この受容体は脳内のあらゆる場所に存在し、その機能不全は数多くの神経疾患、特にてんかんの根底に存在する。本論部では重度のてんかんに至るα1-γアミノ酪酸A型受容体の変異体の特徴を報告する。根底に存在するメカニズムは構造的な異常であり、α1サブユニット膜貫通ドメインの部分的欠失と無意味な残基による部分的置換がある。これがα1サブユニット細胞の表面におけるβサブユニットの差分的発現を損なわせていて、神経抑制を重度に減少させることにつながる。我々の研究によれば、疾患を誘発する変異体はγアミノ酪酸A型受容体の構造に影響を与え、その結果としてサブユニットの組み立てや細胞表面における発現に影響し、神経抑制の効果と神経興奮の範囲や継続時間を組織化している性質に決定的なインパクトを及ぼす。

訳者注 (2020年6月)



目次に戻る