ウィリアムズ症候群とセリアック病:真の合併症か?
Williams-Beuren Syndrome and celiac disease: A real association?
Pangallo E(1), Parma B(2), Mariani M(3), Cianci P(3), De Paoli A(3), Maitz S(4), Fossati C(4), Panceri R(4), Agosti M(1), Selicorni A(3).
Author information:
(1)Department of Pediatric, Ospedale 'F. Del Ponte', University of Insubria, Varese, Italy.
(2)Department of Pediatric, ASST-Lariana, Sant'Anna Hospital, San Fermo Della Battaglia (Como), Italy. Electronic address: barbara.parma@asst-lariana.it.
(3)Department of Pediatric, ASST-Lariana, Sant'Anna Hospital, San Fermo Della Battaglia (Como), Italy.
(4)Department of Pediatric, Fondazione MBMM San Gerardo Hospital, Monza, Italy. Eur J Med Genet. 2020 Jul 2:103999. doi:10.1016/j.ejmg.2020.103999. Online ahead of print.
ウィリアムズ症候群患者に対してはセリアック病(Celiac disease (CD))のスクリーニングが推奨されているが、文献に記載されたデータはウィリアムズ症候群におけるセリアック病の発症率とは一致していない。我々は101人のイタリア人ウィリアムズ症候群患者(平均年齢13.5歳)のデータを遡及的に収集し、大規模コホート集団におけるセリアック病の発症率を明らかにした。患者全員にセリアック病の生化学的検査、すなわちIgAと抗グルタミン転移酵素反射抗体(anti-transglutaminase reflex antibodies)を対象とする。セリアック病特異的なHLA型検査を42人の患者で実施した。欧州小児栄養消化器肝臓学会(ESPGHAN)ガイドラインに沿って、患者に対して小規模腸管生検を実施した。7人のウィリアムズ症候群患者が明らかなセリアック病と診断された。3人の患者はHLA-DQのヘテロ二量体とセリアック病に特異的な抗体価という徴候で診断された一方、残る4人は小規模腸管生検で診断された。我々のコホート集団におけるセリアック病の有病率は6.9% (7/101)だった。101人中42人の患者でHLA型検査を実施し、42人中29人(69%)の患者が遺伝的にセリアック病素因を有していた。このセリアック病の有病率とセリアック病特異的なHLA型保有率の両方とも母集団より高かった(p < 0.001; p < 0.001)。我々のコホート集団はウィリアムズ症候群患者におけるセリアック病のリスクが母集団より優位に高くなることを最も明らかに示している。さらに、HLA型検査の結果は、他の科学的文献と同様に、ウィリアムズ症候群におけるセリアック病の有病率が高いのは本質的に遺伝子的疾患そのものと関連するのではなく、HLA型保有率が高いためである可能性がある。しかし、この仮説を確認するためには、HLA型検査をもっと大規模なウィリアムズ症候群のコホート集団に対して実施することが必要である。我々が得たデータからは、ウィリアムズ症候群患者に対してはHLA型検査の実施が必須であり、セリアック病のスクリーニングは遺伝的素因を有する場合にのみ実施すべきであるということを示している。
訳者注
●ESPGHAN
The European Society for Paediatric Gastroenterology Hepatology and Nutrition
●セリアック病
疾患の特徴:
セリアック病は全身性の自己免疫疾患であり、消化器症状(下痢・体重減少・腹痛・食欲不振・乳糖不耐、腹部膨満・易刺激性)や極めて多様な非消化器症状(鉄欠乏性貧血・疱疹状皮膚炎・慢性疲労・関節痛/炎症・片頭痛・抑うつ・注意欠陥性障害・てんかん・骨粗鬆症/骨減少症・不妊/習慣流産・ビタミン欠乏・低身長・成長障害・思春期遅発症・エナメル質異常・自己免疫疾患)を合併しうる。軽度〜重度の消化器症状を特徴とする古典的なセリアック病は、消化器症状を欠く非古典的なセリアック病よりも多くはない。
診断・検査:
セリアック病の診断は、小腸生検による特徴的な組織学的所見やグルテン除去食による臨床的/組織学的な改善によって行われる。ほとんどのセリアック病患者はセリアック病関連抗体を有する。セリアック病の発症には、HLAクラスU遺伝子HLA-DQA1やHLA-DQB1の特異的なアレル変異が存在しないといけない。一般人口の30%は1つ以上のセリアック病関連アレルを有しているが、セリアック病を発症するのはわずか3%であるため、セリアック病関連HLAアレルの有無は診断の決め手とはならない。しかし、同アレルを認めない場合は基本的に除外される。
症候の治療:
生涯にわたり厳格なグルテン除去食(小麦・ライ麦・大麦を避ける)を順守する。栄養障害(鉄・亜鉛・カルシウム・脂溶性ビタミン・葉酸)の治療を行う。骨粗鬆症に対する標準的な治療を施行する
(2020年7月)
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