こどもの腎血管性高血圧の遺伝学
Genetics of renovascular hypertension in children.
Viering DHHM(1), Chan MMY(2), Hoogenboom L(3), Iancu D(2), de Baaij JHF(1), Tullus K(3), Kleta R(3)(2), Bockenhauer D(3)(2).
Author information:
(1)Department of Physiology, Radboud Institute for Molecular Life Sciences, Radboud University Medical Center, Nijmegen, The Netherlands.
(2)Department of Renal Medicine, Division of Medicine, University College London, London, United Kingdom.
(3)Paediatric Nephrology, Great Ormond Street Hospital for Children NHS Foundation Trust.
J Hypertens. 2020 Oct;38(10):1964-1970. doi: 10.1097/HJH.0000000000002491.
目的:子どもの腎血管性高血圧は多くの場合、その原因は不明である。本研究の目的は、子どもの腎血管性高血圧が発達する要因としての遺伝子変異を調べることである。
手法:ある三次医療機関から得られた血縁関係にない37人の子どもからなるコホート集団に対して、エクソーム解析を実施した。認識できた変異があり疾患を疑う遺伝子を評価し、遺伝子ベースの変異量分析を行って新規の変異を探索した。
結果:患者の大部分ではエクソーム解析で原因となる変異を見つけられなかった。5人の患者においては既知の疾患関連遺伝子に病原性の変異を発見した(NF1の病原性変異が1人、ELNが1人、ウィリアムズ症候群に一致する染色体7Q11.23領域の欠失が1人)。他の2人の患者では病原性と思われる変異が腎血管性高血圧の原因と推定されている2つの遺伝子(SMAD6とGLA)で見つかり、両方に臨床症状がみられた。さらに10人の患者が意義不明の変異を有しており、腎血管性高血圧の原因と推定されている遺伝子が6人、不明が4人である。稀少変異量分析を行ったが、これ以上の候補遺伝子は見つからなかった。
結論:NF1やELNや7q11.23delなどにおける生殖細胞系列変異などの遺伝子の寄与は腎血管性高血圧の子ども37人のうちの5人(14%)だけに見られた。他の12人(32%)の子どもたちは、SMAD6遺伝子(脈管障害遺伝子であり、今までのところ腎血管性高血圧との関連は不明)の病原性変異を含む原因となりうる変異が確認された。最も重要なこととして、我々が得たデータは、エクソーム解析のよっては非症候性の子どもたちにおける腎血管性高血圧の原因を特定することはほとんど不可能であるという事実である。遺伝子外の要因、あるいは体細胞の遺伝子変異がもっと重要な役割を果たしている可能性があることを指摘しておきたい。
(2020年9月)
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