エラスチン動脈症患者における遺伝子診断と循環器表現型の重症度
Genetic Diagnosis and the Severity of Cardiovascular Phenotype in Patients with Elastin Arteriopathy.
Min S(1), Kinnear C(1), D'Alessandro LCA(2), Bouwmeester J(1), Yao R(1), Chiasson D(3), Keeley F(4), Mital S(5).
Author information:
(1)Genetics & Genome Biology Program, Hospital for Sick Children, Toronto, ON, Canada.
(2)Pediatric Cardiology, Women and Children's Health, Trillium Health Partners, Mississauga & Department of Pediatrics, University of Toronto, Toronto, ON, Canada.
(3)Department of Pediatric Laboratory Medicine, Laboratory Medicine & Pathobiology, The Hospital for Sick Children, University of Toronto, Toronto, ON, Canada.
(4)Program in Molecular Medicine, The Hospital for Sick Children & Department of Biochemistry, University of Toronto, Toronto, ON, Canada.
(5)Genetics and Genome Biology Program & Department of Pediatrics, Hospital for Sick Children & Hospital for Sick Children, University of Toronto, Toronto, ON, Canada.
Circ Genom Precis Med. 2020 Sep 22. doi: 10.1161/CIRCGEN.120.002971. Online ahead of print.
背景:エラスチン不全は再発性循環器狭窄の原因となる。エラスチン遺伝子の半接合欠失はウィリアムズ症候群の原因であり、一方で、エラスチン遺伝子内の一塩基多様性は非症候性大動脈弁上狭窄症を引き起こす。我々の目的は、ウィリアムズ症候群と非症候性大動脈弁上狭窄症それぞれの患者の循環器系疾患の予後を比較することである。
手法:今回の単一医療機関における遡及研究には循環器系疾患を有する患者(ウィリアムズ症候群が81人、非症候性大動脈弁上狭窄症が42人)が含まれている。外科手術やカテーテルを受けないことと再治療を比較した。患者8人と対照者6人の循環器系臓器の壁構造を分析した。
結果:非症候性大動脈弁上狭窄症患者[0.3歳(0.4-0.7)]はウィリアムズ症候群患者 [中央値1.3歳(0.2-3.0)]と比較して年齢が低く、外科手術やカテーテルを受けるケースは多く、治療のない期間はそれぞれ1.1年[0.3, 5.9]対4.7年[2.4, 13.3]である(ハザード比は1.62, 95%信頼区間は1.02, 2.56; p=0.04)。非症候性大動脈弁上狭窄症患者が再手術を受けることもより多い(p=0.054 ログ・ランク検定による)。随伴性弁性大動脈弁狭窄(concomitant valvar aortic stenosis)の初回発生および再発に対する治療頻度が高いことに関係していると思われる。組織診断の結果、対照群と比較するとウィリアムズ症候群と非症候性大動脈弁上狭窄症患者では、内膜および中膜の肥厚、弾性繊維の混乱化や断片化、平滑筋カルポニン発現の低下、血管壁内における発現でマクロファージマーカーCD68が増加するなどが明らかになった。
結論:非症候性大動脈弁上狭窄症患者はウィリアムズ症候群患者に比べて、より早期から頻度高く循環器や弁、特に随伴性弁性大動脈弁狭窄の治療や再治療を必要とする。この知見は循環器系疾患の患者を有する家族に対する指導カウンセリングの際の予後に関する重要な情報提供になるとともに、再狭窄のリスクを予見することを基本とした基本治療計画のガイドになる。
(2020年9月)
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