ウィリアムズ症候群のモデルとなるショウジョウバエにおける核クロマチン形成と行動に対する片親起源
Parent-of-origin effects on nuclear chromatin organization and behavior in a Drosophila model for Williams-Beuren Syndrome.
Medvedeva AV(1), Tokmatcheva EV(1), Kaminskaya AN(2), Vasileva SA(1), Nikitina EA(3), Zhuravlev SA(1), Zakharov GA(1), Zatsepina OG(4), Savvateeva-Popova EV(1).
Author information:
(1)Pavlov Institute of Physiology of the Russian Academy of Sciences, St. Petersburg, Russia.
(2)Pavlov Institute of Physiology of the Russian Academy of Sciences, St. Petersburg, Russia Institute of Bioorganic Chemistry of the Russian Academy of Sciences, Moscow, Russia.
(3)Pavlov Institute of Physiology of the Russian Academy of Sciences, St. Petersburg, Russia Herzen State Pedagogical University of Russia, St. Petersburg, Russia.
(4)Engelhardt Institute of Molecular Biology of the Russian Academy of Sciences, Moscow, Russia.
Vavilovskii Zhurnal Genet Selektsii. 2021 Sep;25(5):472-485. doi: 10.18699/VJ21.054.
子孫における精神神経疾患の予後は、患者の(1)片親起源効果とそれに影響を与えている(2)神経細胞の核の三次元クロマチン構造と(3)親特有のマイクロRNAの影響を考慮することが必要となる。それに加えて親の認知表現型の構成は学習習得と忘却あるいは記憶消去の両方から影響を受ける。これらのプロセスは独立であり異なるシグナル伝達カスケードによって制御されている。1番目はcAMP依存性であり、2番目は小さなGTP加水分解酵素であるRac1-LIMK1 (LIM-kinase 1)によるアクチン再構成である。ショウジョウバエのような簡単な実験モデルシステムが認知神経科学的な病態につながる原因と帰結を探る助けになる。最近になって我々は、ウィリアムズ症候群のモデルとなるショウジョウバエを開発した。dlimk1遺伝子を内部に持つ遺伝子座横断的(X:11AB)なagnts3の突然変異体である。agnts3の突然変異は、介在性異質クロマチンの特定部位の異所性接触の頻度を劇的に高め、学習や記憶を抑制し、歩行運動に影響を与える。本研究が明らかにしたように、agnts3と野生株Berlinとの相互混成である多糸X染色体バンドは、遺伝子が母親由来であるか父親由来であるかによって異所性接触頻度の制御モードに関して異質である。生物情報学的分析によって、X:11ABと他のX染色体バンドとの間の異所性接触頻度は短い同一DNA断片(これはショウジョウバエのサテライトDNA反復と部分的に相同である)の出現と相関がある。条件求愛抑制パラダイムにおける学習習得は混成体間で同様であるが、中期記憶の構築は父系遺伝を示す。表面上、これはmiR-974発現の差に依存している。行動に関するいくつかのパラメータは雑種強勢を示す。我々が得たデータはagnts3遺伝子座がクロマチン核組織化のPOEsを通じてトランス因子遺伝子として活動することが可能であり、その結果として行動に影響を与えていることを示す。
(2021年10月)
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