全エキソーム解析を用いてウィリアムズ症候群患者の慢性肉芽腫を明らかにした



Revealing Chronic Granulomatous Disease in a Patient With Williams-Beuren Syndrome Using Whole Exome Sequencing.

Ripen AM(1), Chiow MY(2), Rama Rao PR(3), Mohamad SB(2)(4).
Author information:
(1)Primary Immunodeficiency Unit, Allergy and Immunology Research Centre, Institute for Medical Research, National Institutes of Health, Ministry of Health Malaysia, Selangor, Malaysia.
(2)Institute of Biological Sciences, Faculty of Science, University of Malaya, Kuala Lumpur, Malaysia.
(3)Pediatrics Department, Keningau Hospital, Ministry of Health Malaysia, Sabah, Malaysia.
(4)Centre of Research in Systems Biology, Structural Bioinformatics and Human Digital Imaging (CRYSTAL), University of Malaya, Kuala Lumpur, Malaysia.
Front Immunol. 2021 Nov 4;12:778133. doi: 10.3389/fimmu.2021.778133. eCollection 2021.

患者の表現型が混合している場合は診断を確定すること困難になる。本研究では感染症や皮膚の腫瘍を繰り返すなど、ウィリアムズ症候群では珍しい症状を呈するムルット族の7歳の少女の症例を報告する。2種類目の遺伝子疾患の可能性を考えて、全エキソーム解析を用いて免疫の先天性異常にかかわる遺伝子の突然変異スクリーニングを行った。エキソームデータのコピー数多型を分析した結果、既知のウィリアムズ症候群に関連する染色体7q11.23領域にある1.53Mbの半接合欠失が明らかになった。さらに、NCF1遺伝子の両アレル性欠失を検出した。これは慢性肉芽腫の常染色体劣性遺伝を示唆している。ジヒドロローダミン(DHR:訳者注=蛍光ミトコンドリア色素)フローサイトメトリー診断テストによって好中球酸化バースト活動が異常に低いことが判明した。NCF1とその偽遺伝子を同時増幅することで、NCF1(NM_000265.7: c.75_76delGT: p.Tyr26Hisfs*26)のエクソン2の先頭部分でGT欠失(ΔGT)が判明した。GT欠失と20塩基遺伝子スキャンを用いてNCF1遺伝子とNCF1偽遺伝子の比率を推定したところ、この患者にはNCF1遺伝子のコピーが存在しないことが判明した。父親は2:4という正常な比率であったが、母親は1:5という比率を示して、GT欠失を含むNCF1遺伝子のキャリアであることを意味していた。NCF1遺伝子を一つ有するアレルを含む7q11.23領域の欠失と、2番目のNCF1アレルにGT欠失があることで我々の患者にウィリアムズ症候群と慢性肉芽腫が共存することを説明できる。本研究は混合された表現型を有する症例の分子的診断の確立に全エキソーム解析が有用であること示しており、適切な予防的治療提供を可能にする。

(2021年11月)



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