ウィリアムズ症候群におけるエピジェネティックな老化
Epigenetic aging in Williams syndrome.
岡崎 賢志1)、木村 遼2)、大塚 郁夫1)、富和 清隆3)、船曳 康子4)5)、萩原 正敏2)、村井 俊哉5)、菱本 明豊1)6)7)
1) 神戸大学 大学院医学研究科 精神医学分野
2) 京都大学 大学院医学研究科 形態形成機構学
3) 東大寺福祉療育病院
4) 京都大学 大学院人間・環境学研究科 共生人間学専攻 認知・行動科学講座
5) 京都大学 大学院医学研究科 医学専攻 脳病態生理学講座精神医学
6) 横浜市立大学 医学部精神医学教室
7) 横浜市立大学附属病院 精神科・児童精神科
J Child Psychol Psychiatry. 2022 Apr 13. doi: 10.1111/jcpp.13613. Online ahead of print.
背景:ウィリアムズ症候群は希少遺伝子疾患であり、染色体7q11.23領域の微小欠失を原因とし、身体や認知の機能にわたる多様な徴候を特徴としている。ウィリアムズ症候群はDNAメチル化パターンの変異に関連していると報告されている。しかし、長期にわたる研究で得られる情報が不足していることから、ウィリアムズ症候群で老化が加速しているかどうかは定かではない。ゲノム全域にわたるDNAメチル化プロフィールが「エピジェネティックな時計」の役割を果たし、血漿タンパク質やテロメア長などの老化関連マーカーによる生物学的老化を見積もる手助けになっている。
手法:32人のウィリアムズ症候群患者と32人の健康な対照群から得られた血液サンプルを用いて、GrimAge、DNAメチル化ベースのテロメア長(DNAmTL)、その他のエピジェネティッククロックを調査した。
結果:ウィリアムズ症候群患者は対照群に比べて、GrimAge、DNAmTL、その他のエピジェネティッククロックにおいて有意な加速が観測された。加えて、GrimAgeのいくつかのコンポーネント、すなわちアドレノメデュリン、増殖分化因子15、レプチン、プラスミノーゲン活性化因子インヒビター1等がウィリアムズ症候群において変異していた。
結論:本研究はウィリアムズ症候群において生物学的老化促進が関連している可能性があるという仮説を指示する新たな証拠を提供する。ウィリアムズ症候群の根底にある全般的な生物学的効果をよりよく理解することで患者のケアを改善する新たな基盤の提供が可能になる。したがって、さらに長期に渡る追跡調査研究が必須である。
(2022年4月)
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