弾性繊維の変性に関連する動脈疾患における合成弾性たんぱく質の生理的影響:エラスチン遺伝子ハプロ不全の雄及び雌のマウスの大動脈に対する影響
Physiological Impact of a Synthetic Elastic Protein in Arterial Diseases Related to Alterations of Elastic Fibers: Effect on the Aorta of Elastin-Haploinsufficient Male and Female Mice.
Boete Q(1), Lo M(2), Liu KL(2), Vial G(1), Lemarie E(1), Rougelot M(1), Steuckardt I(1), Harki O(1), Couturier A(1), Gaucher J(1), Bouyon S(1), Demory A(1), Boutin-Paradis A(1), El Kholti N(2), Berthier A(2), Pepin JL(1), Briancon-Marjollet A(1), Lambert E(2), Debret R(2), Faury G(1).
Author information:
(1)Universite Grenoble Alpes, Inserm, CHU Grenoble Alpes, HP2, U1300, 38000 Grenoble, France.
(2)Institut de Biologie et Chimie des Proteines UMR5305-LBTI, CNRS, Lyon-7, Passage du Vercors, CEDEX 07, 69367 Lyon, France.
Int J Mol Sci. 2022 Nov 3;23(21):13464. doi: 10.3390/ijms232113464.
エラスチン(90%)とフィブリリンリッチなマイクロフィブリル(10%)からなる弾性繊維(Elastic fibers)は重要な細胞外要素であり、動脈に弾性を与えている。弾性繊維の変性は循環器系の機能障害につながり、エラスチン遺伝子のハプロ不全であるマウス(Eln+/-)やヒト(ウィリアムズ症候群の大動脈弁上狭窄症)にみられる。Eln+/+やEln+/-のマウスにおいて、合成弾性たんぱく質(synthetic elastic protein (SEP))が治療に恩恵をもたらす影響を評価(動脈映像、組織診断、定量的PCR、ウェスタンブロット、細胞培養)した。合成弾性たんぱく質は、エラスチンの前駆体であるトロポエラスチンのいくつかのドメイン、すなわち疎水性弾性に関連するドメインとエラスチン受容体と結合する部位、を模倣した。大動脈やこれらの動物からから抽出して培養した動脈平滑筋内において、合成弾性たんぱく質を用いた治療によって、Eln+/-マウスにおいて、エラスチンやフィブリリン1の合成が誘導され、大動脈の弾性ラメラが厚くなり、動脈硬化が減少し、弾性ラメラの破壊が減少する強い傾向がみられた。同時に合成弾性たんぱく質はコラーゲンの高次構造や転写表現型を変異させており、いくつかの動物でフェニレフリンに対する動脈収縮反応が亢進し、雌のEln+/-マウスではアセチルコリンに対する正常な血管拡張反応が回復した。合成弾性たんぱく質は、大動脈の構造や機能が変質したエラスチン欠乏症の患者を対象として興味ある可能性を秘めた今後の治療法に通じる生体模倣型分子として考慮すべきである。
(2022年11月)
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