ウィリアムズ症候群モデルマウスの音の周波数に対する生得的な高い識別能力



Innate frequency-discrimination hyperacuity in Williams-Beuren syndrome mice.

Davenport CM(1), Teubner BJW(1), Han SB(1), Patton MH(1), Eom TY(1), Garic D(1), Lansdell BJ(1), Shirinifard A(1), Chang TC(2), Klein J(3), Pruett-Miller SM(3), Blundon JA(1), Zakharenko SS(4).
Author information:
(1)Department of Developmental Neurobiology, St. Jude Children's Research Hospital, Memphis, TN 38105, USA.
(2)Center for Applied Bioinformatics, St. Jude Children's Research Hospital, Memphis, TN 38105, USA.
(3)Department of Cell and Molecular Biology, St. Jude Children's Research Hospital, Memphis, TN 38105, USA.
(4)Department of Developmental Neurobiology, St. Jude Children's Research Hospital, Memphis, TN 38105, USA. Electronic address: stanislav.zakharenko@stjude.org.
Cell. 2022 Oct 13;185(21):3877-3895.e21. doi: 10.1016/j.cell.2022.08.022. Epub 2022 Sep 23.

ウィリアムズ症候群は27個までの遺伝子の半接合欠失を原因とする希少疾患である。神経発達や認知機能の障害があるにも関わらず、ウィリアムズ症候群の患者は音楽能力や聴覚能力が維持されたり強化されたりしていて、聴覚認知の遺伝子的基盤に関する洞察を提供している可能性がある。ここに、我々はウィリアムズ症候群モデルマウスが生得的に音の周波数に対する識別能力が強化され、聴覚野において周波数コード能力が向上していることを報告する。化学遺伝学的な追加検査により音の周波数に対する高い識別能力は聴覚野の過興奮性介在神経細胞によってもたらされていることが示された。ウィリアムズ症候群責任遺伝子の一つであるGtf2ird1のハプロ不全が、神経ペプチド受容体VIPR1を下方制御することでウィリアムズ症候群の表現型を再現している。VIPR1はウィリアムズ症候群患者の聴覚野や、ウィリアムズ症候群の微小欠失を有するひとのiPS(人工多能性幹)細胞から導出されたで神経オルガノイドで減少している。聴覚野にある介在神経細胞におけるVipr1遺伝子の欠失や過剰発現は、それぞれウィリアムズ症候群モデルマウスの細胞や行動の表現型を模倣したりその逆になる。このように、聴覚野の介在神経細胞におけるGtf2ird1-Vipr1機構は、ウィリアムズ症候群における聴覚の超鋭敏さの根底を形成している可能性がある。

(2022年11月)



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