ヒトの7番染色体上にあるウィリアムズ症候群の欠失領域の比較マッピング



Comparative Mapping of the Region of Human Chromosome 7 Deleted in Williams Syndrome.

DeSilva U, Massa H, Trask BJ, Green ED
Genome Technology Branch, National Human Genome Research Institute, National Institutes of Health, Bethesda, Maryland 20892 USA. Genome Res 1999 May;9(5):428-436

ウィリアムズ症候群は複雑な発達障害でヒト7番染色体の7q11.23にある大きな領域(およ そ1.5〜2Mb)の欠失が原因である。物理マッピング研究によって、多くの遺伝子を含んでい るこの領域がほとんど同一の大きないくつかのDNAブロックによって区分されていること が判明した。このように高度に相似しているDNAセグメントが物理的に非常に近いところ に存在していることが、7番染色体にあるこのセグメントの正確な長期的編成過程を説明 することを妨げてきた。その構造と重要で複雑な遺伝子領域の進化的起源に関する洞察を 得る為に、マウスの5番染色体にある相当領域を含む完全に連続するバクテリア人工染色 体(BAC)とP1導出人工染色体(PAC)のコンティグ(集団)マップを作成した。ヒトのウィリア ムズ症候群領域の物理マップをクローン法で作り出す事の難しさに比べて、マウスのウィ リアムズ症候群領域のBAC/PACを利用したマップは、ヒトのウィリアムズ症候群領域に存 在するような巨大な複製領域が存在しない為に容易に作成する事ができる。この違いを確 認する為に、それぞれヒトとマウスを代表するBACが、核分裂中期や静止期の染色体を対 象としたFISH(fluorescence in situ hybridization)用のプローブとして用いられた。ウ ィリアムズ症候群領域のユニークではない部分から導出されたヒトのBACは、ヒト7番染 色体の7q11.23領域内で、複数の近接した部分に接合(hybridize)する。それとは対照的に、 同等のマウスのBACはマウスの5番染色体の一箇所にしか接合しない。さらに、FISH分析 の結果、ウィリアムズ症候群領域内にある複製部分が、ヒト以外の多種の霊長類(チンパン ジー、ゴリラ、オランウータン、テナガザル)にも存在する事が判明した。またヒト染色体 の7p22と7q22の相当する遺伝子位置への接合も、ヒト・チンパンジー・ゴリラでは観察 されたが、それ以外の対象動物には見られなかった。これらの結果を総合すると、ウィリ アムズ症候群領域は、ヒト染色体7q11.23の巨大なDNA複製領域と関連があり、同時にヒ ト以外の霊長類の相同遺伝子領域とも関連がある。しかし、このような複製領域はマウス には存在しない。

(1999年9月)

目次に戻る