最新の研究成果:ウィリアムズ症候群における染色体の欠失:大きさは関係するのか?



Research Update: The Williams Syndrome Chromosome Deletion: Does Size Matter?

Colleen A. Morris, M.D., University of Nevada School of Medicine, Las Vegas, NV
Carolyn B. Mervis, Ph D., University of Louisville, Louisville, KY.
"Heart to Heart" Volume 16 Number 2 June 1999, Page 3

ウィリアムズ症候群は7番染色体の欠失が原因である。最新の情報では、通常欠失し ている領域かで16個の遺伝子が確認されている。大部分のウィリアムズ症候群の人は正 確に同じ大きさの欠失を持つが、この分子遺伝学的同質性があるにもかかわらず、特徴や 徴候はとても変化に富んでいる。エラスチン遺伝子の片方の欠失によって循環器系疾患、 特に動脈の狭窄が発生する事がわかっている。それでは、心臓手術が必要なほど重症の動 脈障害を持つ人がいる一方で、まったく何の症状も出ない人がいるのは何故なのであろう か? エラスチン遺伝子の突然変異により家族性大動脈弁上狭窄症(SVAS)を持つようにな った家系でも、同じ兄弟姉妹の中で症状の重い人と軽い人がいる例は数多く存在する。遺 伝学者の多くは、別の染色体上にある他の遺伝子の作用と環境要素の両方が同時に各個人 の症状に影響を及ぼしていると考えている。このような症状が持つ本来的な変動が遺伝的 研究を難しくしている。ウィリアムズ症候群の人は、明白な循環器系疾患だけではなく、 知性を含むその他の状態においても相互にばらつきや違いがある。

エラスチン遺伝子の欠失が循環器系疾患の原因であることはわかっているが、その他 の遺伝子が他の症状のどの局面に影響しているかをどのようにして解明するのであろうか。 ある特定の遺伝子の影響を調べる方法の一つに、欠失を持っている人と持っていない人と を比べる方法がある。このため、我々を含むいくつかの研究グループが、ウィリアムズ症 候群の人にある欠失領域の大きさを調べ、欠失の大きさと症状を比較している。直感的に は、欠失の小さい人のほうが、欠失の大きい人より症状が少ないと思われる。ごく一般的 に言うと、この考えは正しい。しかし、ウィリアムズ症候群の欠失領域で欠失が小さいと 認められた人の中では、一人だけが典型的なウィリアムズ症候群の症状を持っていたに過 ぎない。他の小さな欠失を持っていた人全員が、SVASといくつかの症状を併せ持つ家系に 属しており、完全なウィリアムズ症候群の表現型を持つ人はいない。SVASを持つ家系に属 さないウィリアムズ症候群の人は同じ大きさの欠失を持つ。典型的なウィリアムズ症候群 の人から採取したおよそ200サンプルが、同僚のマーク・キーティング(Mark Keating)博 士とディーン・ストック(Dean Stock)博士の研究室で調査された。200サンプルの中で4例 だけが欠失領域が大きいことが判明した。大きな欠失を持つこの4人は、ウィリアムズ症 候群の平均より低い知能指数を持っていたが、典型的な大きさの欠失であるにもかかわら ず同程度の知能指数を示すウィリアムズ症候群の人についても調査を行った。知能指数曲 線の両端(高い知能指数と低い知能指数)に位置するウィリアムズ症候群の人は同じ大きさ の欠失を持っていた。この違いはどのように説明できるのであろうか? おそらく、普通の 人々にある知能指数の変動の原因と同じである(図1)。

この領域の欠失が大きい人々や小さい家系の少数の人々を研究する事は、どの遺伝子 がどのウィリアムズ症候群の表現型に寄与しているかを決定する事に役に立つ。この課題 は、研究に参加してくれている家族達が、引き続き研究に貢献してくれる事でのみ解決で きる。この研究に興味を持ち、お子さんが高カルシウム血症を持っている、あるいは珍し いウィリアムズ症候群の合併症を持っている、あるいは知能指数がカーブのどちらかの端 にある、という人は、ステファン・ネルソン(Stephan Nelson)に電話(702-671-2224)か電 子メール(nelso_s@med.unr.edu)で連絡をとって欲しい。

我々の研究に参加してくれた人々と、過去にエラスチン遺伝子の欠失を指摘された 人々のサンプルについて欠失領域の大きさの再検査を行っている。すでに欠失領域の大き い人々、小さい人々が見つかっている。これまでに調査した他の人々は典型的な欠失の大 きさを持っている。

謝辞

図1(訳者注:図そのものは省略)

(1999年7月)

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