WBSCR14,ウィリアムズ症候群で欠失している転写機能を持つと推定 される遺伝子:ヒト遺伝子とマウス相同分子種の全特性



WBSCR14, a putative transcription factor gene deleted in Williams-Beuren syndrome: complete characterisation of the human gene and the mouse ortholog.

de Luis O, Valero MC, Jurado LA
Servicio de Genetica, Hospital Universitario La Paz, Madrid, Spain.
Eur J Hum Genet 2000 Mar;8(3):215-22

ウィリアムズ症候群は多臓器が影響を受る神経発達疾患であり、7q11.23領域の染色体の半 接合欠失が原因である。これまで17個に上る遺伝子が含まれている共通的中間領域の欠 失が患者の大半にみられる。エラスチン遺伝子の片側欠失が循環器所見の原因であるが、 欠失している他の遺伝子がウィリアムズ症候群の表現型に与える影響は不明である。我々 は、ウィリアムズ症候群において共通して欠失しているWBSCR14遺伝子(WS-bHLH という 部分的な形で既に報告済み)の全特性を解明した。WBSCR14の相補DNA(cDNA)は852個のア ミノ酸からなり、ヘリックス−ループ−ヘリックス−ロイシンジッパー基本構造(a basic helix-loop-helix-leucine-zipper motif = bHLHZip)と、2分核定位シグナル(a bipartite nuclear localisation signal = BNLS)を持つタンパク質をコードしている。この構造から 転写機能を持つと推定される。WBSCR14は4.2キロ塩基の転写体(a 4.2kb transcript)とし て、成人の肝臓や胎児発育の後期段階(late stages of foetal development)で発現が優勢 となる。WBSCR14遺伝子座は17個のエクソンを有する33kbの遺伝子DNAを含んでいる。 遺伝子の内部には、2塩基繰返し多形(intragenic polymorphic dinucleotide repeats)が 2種類確認されており、ウィリアムズ症候群患者の半接合の確認に利用できる。我々はマ ウスの相同分子種のクローンにも成功し、ヒトの7q11.23に相当する保存遺伝子相同性を もつマウスの5番染色体上に遺伝子座をマップした。他のbHLHZip構造を持つタンパク質 の機能がその量に影響を受けることと、WBSCR14が発現機能を持つと推測される事から、こ の遺伝子座の半接合はウィリアムズ症候群の徴候に影響を与えている可能性がある。

(2000年5月)



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