明白なヘリックス−ループ−ヘリックス構造を持ったDNA結合タンパク質であるTFII-Iファミリーの一員、BENの分離と性質



Isolation and characterization of BEN, a member of the TFII-I family of DNA-binding proteins containing distinct helix-loop-helix domains.

Bayarsaihan D, Ruddle FH
Department of Molecular, Cellular, and Developmental Biology, Kline Biology Tower, Yale University, 266 Whitney Avenue, New Haven, CT 06520.
Proc Natl Acad Sci U S A 2000 Jun 20;97(13):7342-7347

マウスの胎児発生初期、初期エンハンサー(early enhancer (EE))と呼ばれHoxc8転写開始 位置より3kb上流に位置するエンハンサーに似た制御領域(an enhanceosome-like control region)によってHoxc8遺伝子の転写制御が行われる。初期エンハンサーは胚発生8.5日か ら9日目にかけてHoxc8後期発現パターンの確立に寄与している。遺伝子及び生化学的デ ータによると、核因子(nuclear factors)とこの領域とは特定の順序で相互作用を行う。酵 母一代雑種(a yeast one-hybrid)を使って初期エンハンサー構造(EE motifs)と結合する転 写因子を探索した結果、BEN (binding factor for early enhancer:初期エンハンサー結 合因子)と呼ばれる新しいマウスのDNA結合タンパク質を分離した。BENのORFは1072個の アミノ酸からなるタンパク質をコードしており、疎水性ロイシンジッパー構造(a hydrophobic leucine zipper-like motif)と呼ばれる6個のヘリックス−ループ−ヘリッ クス構造と、セリンに富んだリピート構造を含んでいる。マウスのBEN遺伝子は、95個の アミノ酸で構成されるヘリックス−ループ/スパン−へリックス構造をコードしている点 において、ヒトのTFII-I遺伝子と構造的に類似している。BEN遺伝子は成体のほとんどの 臓器に見られるいくつかの主要な転写酵素(3.6, 4.4 及び 5.9 kb)を産出し、マウスの胚 発生9.5日から12日目にかけて間葉と上皮の接合部で領域的にも時間的にも不連続に発現 する。大きさが165から40kDaの範囲にありBENがコードするいくつかのポリペプチドは BEN特異的ポリクロナール抗体を使ったウェスタンブロット分析によって同定された。配列 相似性の観点から、BENは最近発表されたヒトWBSCR11遺伝子(GTF2IRD1, GTF3, Cream1や MusTRD1とも呼ばれる)のマウス相同分子種であるという見方を提案する。この遺伝子はウィリ アムズ症候群の患者で半接合的に欠失している。ウィリアムズ症候群は発達経過の混乱が 原因で身体的・認知的・行動的に複雑な症状を有する常染色体優勢遺伝病である。

(2000年6月)



目次に戻る